2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小関 直紀 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | モジュライ空間 / 双有理幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次のことを証明した。射影的で滑らかな代数多様体と、その余次元2での爆発それぞれの上の安定層のモジュライ空間は、具体的に構成されるフリップ型の図式の列で結ぶことができる。この定理は、多様体の次元が2の場合には、中島・吉岡の結果として知られていた。定理内の図式は連接層に対する安定性条件を次々と変えてゆくことで構成されるのだが、そのような安定性条件は、Bridgelandが導入したperverse heartと呼ばれる導来圏のある種のt-構造の核を用いて定義される。この安定性条件の定義自体は中島・吉岡によるもので、高次元でも機能する定義である。しかし、安定性の変化を記述する際に中島・吉岡では曲面特有の議論を使っていた。高次元でも通用する証明のために、私は新たに捻れ対を定義し、その捻れ対を用いて安定性条件の変化を記述できることを示した。 また、定理内の図式を、2点のヒルベルトスキームの場合に詳細に調べた。爆発前後の2点のヒルベルトスキームの間には、接空間の写像を用いた自然な双有理写像があるが、それを極小モデルプログラムに現れるような双有理写像の合成として具体的に記述することができた。また、2次元の場合と3次元以上の場合とでは異なる現象が起きることを確認できた。実際、2次元の場合にはすべての射のファイバーは射影空間であるのに対し、3次元以上の場合には、ファイバーとして2次元2次超曲面が現れることを示した。 以上の結果はプレプリント「Perverse coherent sheaves on blow-ups at codimension two loci」としてまとめ、arXivに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の目的の一つは、安定性条件を用いて連接層のモジュライ空間の双有理幾何学について研究することであった。3次元以上の多様体に対しては、Bridgelandの意味での安定性条件の存在は一般には示されていない。そのかわりに、余次元2の爆発に付随する安定性を用いることで、モジュライ空間の幾何学について調べることができた。したがって、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元代数多様体上のBridgeland安定性条件の構成については、本年度の進展はあまりなかったので、その点の研究を進める。具体的な多様体のクラスに対して、安定性条件の存在を示すことを目標にする。
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Research Products
(5 results)