2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00674
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
KIM DAEWOOK 立教大学, キリスト教学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 唯一神観形成 / 混淆主義 / 預言論争 / 預言の衰退 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、主に、『ヘブライ語聖書』の列王記上18章16-40節とエゼキエル書13章を文学的批評によって研究した。 神ヤハウェの預言者エリヤと神バアルの預言者たちとの対決を物語る列王記上18章に関する研究成果は、次のとおりである。当該物語には、古代イスラエルにおいてヤハウェとバアルが混淆的に崇拝されていることが暗示されている。このような混淆的な崇拝を除去するために、当該物語はヤハウェとバアルを対比させて、ヤハウェへの排他的礼拝を強調する。そして当該物語は、女神アシェラをバアルの配偶女神として描き、さらにアシェラを暗黙的に非難することによって、『ヘブライ語聖書』と聖書外資料から推定される、ヤハウェと女神アシェラとの密接な関係を断絶する。 「イスラエルの預言者たち」(2-16節)と「民の娘たち」(17-23節)を偽預言者として非難するエゼキエル書13章に関する研究成果は、次のとおりである。イスラエルの預言者たちと民の娘たちの預言活動は混淆主義を反映し、エゼキエル書13章は、両預言者グループを非難することによって、混淆主義に対する排他的な態度を示している。さらに当該箇所には、女神イシュタルを暗示する表現が見出され、イシュタルの崇拝に対する非難も潜んでいると考えられる。このような混淆主義に対する排他と非難から、エゼキエル書が完成されたと思われる前六世紀末の宗教的状況と、ヤハウェのみを崇拝して民族アイデンティティを確保しようとした「ユダヤ共同体」の宗教的・政治的戦略が窺える。 以上の研究成果は、預言論争が混淆主義を排他して唯一神観を確立するための題材として利用されたことを示し、紀元前1千年紀の古代イスラエルの宗教における、預言の衰退と唯一神観形成のプロセスを理解する上で意義のある結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに、預言論争に関する『ヘブライ語聖書』のテクストを考察し、その成果を学会等で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼカリヤ書13章における預言非難について研究し、前六世紀末以降の古代イスラエルの宗教における預言理解について考察する。今まで研究した『ヘブライ語聖書』のテクストの宗教的・政治的目的に関する理解を深化し、本研究課題に関する博士論文を執筆する。
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Research Products
(7 results)