2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development and Validation of Strength Analysis Method Explicitly Linked to Macro, Meso and Micro Scales for Woven Composites
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17J00708
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保 凱 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 織物複合材料 / マルチスケール解析 / 強度 / 損傷 / 非弾性 / 均質化法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、織物複合材料の設計・評価技術のさらなる高度化に資するために、織物複合材料のマクロ(積層板)/メゾ(織構造)/ミクロ構造(繊維と母材)における損傷挙動を相互に連成可能な理論・手法を構築し、その解析コードを開発することを目的としている。また実験により、開発手法の定量的な妥当性を確認する。上記の目的を達成するために、本研究において取り組むべき課題として、(1)マクロ/メゾ/ミクロスケールを全て連成し、かつ損傷を考慮可能な強度解析手法の理論構築、(2)上記手法の解析コストの削減、(3)複合材料内部のランダム性の考慮、(4)上記手法の実験的検証、の4点が挙げられる。 そこで、平成30年度ではまず、3つのスケールを全て連成した解析手法の発展として、熱残留応力解析への拡張を行った。これにより温度変化に伴う織物複合材料全体における線膨張係数の非線形性を材料単体の特性から高精度に解析できるようになった。また、織物複合材料の熱膨張実験の結果の比較により、上記解析の妥当性も確認した。 次に、ネスティングを有する平織複合材料の弾-粘塑性解析と積層ずれ依存性の調査を行った。具体的には、平織複合材料において、成型時に発生しうる内部構造であるネスティングにおいて積層ずれも発生することに着目し、それらを考慮可能な境界条件を考案し、それを上記マルチスケール解析手法に組み込むことが成功した。これにより積層ずれが上記材料の応力-ひずみ関係にどれだけ影響を与えるかを実験することなく推定できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、織物複合材料の設計・評価技術をさらに向上すべく、その高精度な強度解析手法の開発および実証を目的としている。平成30年度においては、まず昨年度実現したマクロ/メゾ/ミクロスケールの連成解析を、熱履歴がかかった場合の熱残留応力解析に拡張し、その解析結果を実験結果と比較することによりその妥当性確認を行った。研究概要で述べた結果は、従来考慮できていなかった繊維束内部の母材の非線形性を考慮可能であるから得られたものであり、査読付き英語論文にも掲載された。 次に、昨年度提案したネスティングを有する平織複合材料の基本セルおよびその境界条件を、複合材料内部のランダム性として重要な積層ずれの影響も考慮できるような境界条件へ拡張し、平織複合材料の弾-粘塑性解析を実施した。このように今までに計算コストを軽減しつつ、ネスティングおよび積層ずれが共存した解析を実施した例はないだけではなく、研究概要で述べた結果を実験から得ようとすると、その試験片や試験機等が特別製となり、膨大なコストがかかるから、本手法は非常に実用的であるといえる。この点が評価され、学会にて表彰を受けた。 加えて、実験結果との比較解析で使用する織物複合材料の材料定数を取得するため、複数の種類の平織複合材料や綾織複合材料の短冊形試験片を使用して静的引張試験を実施した。 上記のように進捗はあるものの、繊維束内の繊維分布のランダム性の考慮の考慮や損傷挙進展解析に関しては、プログラム作成やそのデバックは行っている状態であるから、十分な成果を得ることはできていないため、上記のように自己評価をする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に記載したように、平成31年度においては、平成30年度で実現した3つのスケールを連成した均質化法に、適切な損傷判定則を導入する。加えてマクロスケールに使用構造部材を想定した有限要素モデルの適用も試みる。この導入に伴い、計算コストが膨大となることが予想されるから、作成した解析コードに並列計算手法の導入も検討する。具体的には、解析コードの最適化やOpenMPを用いた並列化を実施し、解析時間の削減を図る。 また平成30年度に引き続き、必要な場合に織物複合材料の材料試験を実施する。これにより損傷進展解析に用いる不足した各種パラメータを取得する。
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