2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reception, development and influence of the Mehod Acting in American theater
Project/Area Number |
17J00741
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 博士 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 演劇 / 演技 / ユダヤ系移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年度に提出した修士学位論文以後の課題であった西洋演劇史におけるストラスバーグの演技論の特殊性を明確にするため、特に演出家の出現に注目し研究を進めた。そして日本演劇学会においてその成果をもとに発表を行った。 19世紀以降の西洋演劇における演出家の登場を前提とし、かつ演出家を教育上のモデルとする演技教育について論じる際には、演出家や演出に対する歴史的および理論的な把握が必要と考えられる。それは演技教育者ストラスバーグについて論じる際に基礎的でありかつ重要な視点といえる。そこで本年度は、ストラスバーグが自身の理論が負う人物として挙げる、E・D・クレイグ(『演劇の芸術について』)やA・アルトー(『演劇とその分身』)など従来の演劇制度を批判し演出家の必要性を説いた理論家の演劇論の精読を集中的に行った。 この研究で得られた知見は、それをもとにした演技教育者と俳優の関係への考察として、日本演劇学会の研究集会における発表に活かされた(「他者の眼差しのもとの二重性――ストラスバーグのメソッド」、2017年11月5日)。発表で取り上げたのはストラスバーグの演技論において問題となっている俳優の内面とそれを眼差す者との関係、つまり俳優の内面における感情の生起を誰がいかにして判断するのかということである。この俳優への眼差しの問題は、ハリウッド映画におけるストラスバーグの演技論受容を分析する際のひとつの有効なアプローチを提示している。また同時にそれは俳優に訓練と演出を施す演出家という主題に由来する問題でもあり、ここに演技論における一つの問題系を抽出することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の研究を進めるにあたって基礎的な視座を確保することができ、これはストラスバーグの演技論分析のみならず他の演技論との比較を行う際にも資すると思われる。今年度は海外での資料収集は満足に行うことができなかったが、国内で入手可能な資料の収集と研究自体に進展が見られたため、全体的にみて研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度得られた演出家に関する理論的理解をさらに深めつつ、それに基づきストラスバーグの演技論研究を進める。同時に、20世紀転換期に東欧からニューヨークへ移住したユダヤ系移民らの演劇活動に関する研究に着手する。ユダヤ系移民であるストラスバーグはイディッシュ演劇からそのキャリアを開始し、戦前の活動はユダヤ系移民のコミュニティを土台としている。彼らや彼女らはいかなる仕方でストラスバーグに影響を与えたのかもしくは与えなかったのか、そしてその理由はどこに求められるのか。本年度はその調査にもとづきストラスバーグとの比較研究も行い、彼の出自と演劇そして演技の関係について考察を行う。 それらの研究の成果がまとまり次第、日本演劇学会での研究発表や、『演劇学論集』(日本演劇学会)や『アメリカ太平洋研究』(東京大学アメリカ太平洋地域研究センター)などの研究誌への論文投稿を行う予定である。上記したように本年度は海外での資料収集は充分に遂行できていなかったため、来年度は休暇中に海外渡航し資料を収集することを予定している。
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Research Products
(1 results)