2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00763
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 圭佑 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 局在表面プラズモン共鳴 / 共振器 / 強結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属ナノ構造が示すプラズモン共鳴による光アンテナ効果を利用し、可視光を透過して近赤外光によって発電する全固体透明太陽電池の構築を目指すものである。 これまで研究を進めてきたプラズモン共鳴を用いた全固体太陽電池は、pn接合界面に金ナノ微粒子を1層配置した構造を有しており、共鳴波長でも入射した50%以上の光が透過し、十分光吸収することができなかった。 平成29年度は、入射光の散乱や透過による損失を抑え、高効率に光を吸収可能な光アンテナ構造を検討した。本研究においては、pn接合界面に金ナノ微粒子を配置し、p層とn層の半導体薄膜の膜厚を制御することによってファブリ・ペローナノ共振器を作製し、共振器モードとプラズモンモードの強結合を誘起させて吸収波長の広帯域化、および光吸収効率の増大を試みた。 p層として酸化ニッケル、n層として酸化チタンを用い、pn接合界面に配置した金ナノ微粒子が示すプラズモン共鳴帯と強結合することが可能なファブリ・ペローナノ共振器を設計するため、時間領域差分(FDTD)法の電磁場解析によって酸化チタンと酸化ニッケルの膜厚を検討した。その結果、酸化チタン層が25 nm、酸化ニッケルが44 nmにおいて金ナノ微粒子のプラズモン共鳴帯と強結合するナノ共振器構造が実現することが示された。 本設計に従い、シングルナノオーダーの膜厚制御が可能なパルスレーザー堆積法を用いて実際に構造体を作製したところ、共振器モードとプラズモンモードの強結合に基づく吸収ピークの分裂が観測され、600~840 nmの波長域において80%以上の光吸収を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズモンモードと共振器モードの強結合を利用することで、従来の全固体プラズモン太陽電池に比較して、広い波長領域の効率の高い光吸収を極めて薄いp型およびn型半導体の膜厚で実現しており、画期的な成果であると考える。 現状では半導体由来の整流特性に課題が残っているが、整流特性に関しては半導体膜厚の増加に伴い改善することを明らかにしており、ファブリ・ペローナノ共振器の2次モードを金ナノ微粒子のプラズモン共鳴帯に強結合させることにより、高い光吸収を低下させることとなく光電気特性の改善につなげられるものと考えている。さらに、pn接合界面に配置する金ナノ微粒子のサイズを増大させることによりプラズモン共鳴帯を近赤外波長域にシフトさせることも可能であり、近赤外波長での強結合形成も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、近赤外領域においてプラズモン共鳴を示す金ナノ微粒子を電線リソグラフィーによってpn接合界面に作製するとともに、半導体の膜厚を増加させることによりファブリ・ペローナノ共振器の共鳴波長も同時に近赤外波長域にシフトさせてプラズモン-ナノ共振器の強結合を実現し、近赤外光での光電変換を行って本全固体プラズモン太陽電池の透明化を検討する。 また、異なる金属材料を用いて、金属と半導体界面が及ぼすプラズモン誘起電荷分離への影響を議論し、太陽電池の光電変換効率向上を目指す。
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