2017 Fiscal Year Annual Research Report
災害時の衛星通信ネットワークを確保するモジュール型展開アンテナの内力制御デザイン
Project/Area Number |
17J00774
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
庄司 香織 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 大型宇宙構造物 / 熱変形補正 / ETS-VIII |
Outline of Annual Research Achievements |
最小限の残留バネ力調整量で効率よく展開アンテナの熱変形を補正するための新しい内力制御デザインを考案し,能動的かつ高精度な熱変形補正を必要とする大型宇宙構造物への応用を目指すことが本研究の目的である.そのために,熱変形補正をする上で重要と部材と思われる斜部材について,2つの関節,関節Aおよび関節Bを模擬した1モジュールの解析モデルを用いていくつかの解析を実施した.まず,展開完了時の斜部材の角度について,現況に最も近い183度モデル,180度モデル,175度モデルの3種類を作成し,熱変形補正解析および熱変形補正解析を実施した.その結果,斜部材の角度が180度より小さい場合にのみ熱変形が補正できることが分かった.さらに,関節Bの位置と熱変形補正の関係を調べたところ,関節Bはモジュールの中心部から遠いほど補正しやすくなることも分かった.ただし,この場合はアンテナの収納・展開動作との兼ね合いを考慮する必要がある.また,部材の剛性と熱変形補正の関係について検討した.その結果,熱変形補正に寄与する部材は斜部材のみであることを特定した.以上より,展開完了時の斜部材について熱変形補正に優位な角度があること,斜部材の剛性が最も熱変形補正に寄与することが分かった.ここまでの成果をまとめて,第22回計算工学講演会で発表した.この1モジュールでの知見を踏まえて,14モジュールの解析モデルを構築し熱変形解析および熱変形補正解析を行った.その結果,1モジュールで得られた定性的な傾向が14モジュールでも確認された.電界強度が最も高いアンテナ中央部の変位を1割程度まで低減できた.ここまでの成果をまとめたものを,第23回計算工学講演会およびThe 13th World Congress in Computational Mechanics(WCCM XIII / PANCM II)で発表予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前期では,熱変形補正をする上で重要な部材と思われる斜部材を,詳細にモデル化した1モジュールの解析モデルを作成し,設計内力が生じた展開完了時の動作機構と熱変形補正効果との関係を検証した.その結果,斜部材の角度θが180度以上の場合は,補正前よりも中央変位が大きくなり熱変形を補正できない,つまり,現況のETS-VIIIと同じ動作機構ではモジュールの中央変位を補正できないこと,また,斜部材の角度θが180度より小さい場合は,バネの位置調整によって中央変位が補正可能となることを,動作機構のメカニズムとともに示唆した.この1モジュールでの知見を踏まえて,後期では,大型展開アンテナと同様の14モジュールに解析モデルを拡張し,1: 展開完了時の斜部材の角度を変更する,2: 合成線膨張係数の値を設計変更する,3: 展開用バネの位置を調整する,という3つの熱変形抑制手法を組み合わせた場合の熱変形補正効果を検証した.その結果,複数の手法を組み合わせることで,大型展開アンテナに生じる熱変形に対して精度の良い補正効果が期待できることがわかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
各部材の全長に対するチタン合金接合部品と,CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の骨組部材の長さの比率より算出される合成線膨張係数について,現在は最小限の設計変更になるよう,5種類中1種類のみ変更している.その場合も熱変形補正には問題ないが,特定の部材への負荷が高くなる可能性があり,アンテナ展開形状を保持するための部材内力が低下する恐れがある.その対策として,合成線膨張係数を変更する部材の組合せを検証するとともに,剛性についても検討する.また,2年目は1モジュールの実機を製作し,展開・収納に対して製作し,熱真空試験を実施する予定であったが,予算の関係上,今年度は困難となる可能性が高い.その場合は,人工衛星開発においてすでに実績のあるOrigami/ETSによる機構解析を用いた検証を行う.
|
Research Products
(3 results)