2018 Fiscal Year Annual Research Report
銅触媒による種々の芳香族化合物に対する不斉脱芳香族ホウ素化反応の開発
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17J00809
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽山 慶一 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉ホウ素化 / 脱芳香族化 / 銅触媒 / ピロール |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の芳香族化合物に対する不斉脱芳香族ホウ素化反応により、生理活性化合物に見られる重要骨格を有する光学活性有機ホウ素化合物を効率的に合成することを目指し研究を行った。申請者らは、既にインドールの2位に電子求引性基であるエステルを導入すると、基質のLUMOレベルが低下し、ボリル銅(I)種の付加における反応性が向上することを見出している。この知見から他の芳香族化合物についても同様の戦略を用いれば、芳香族化合物に対する炭素-ホウ素結合形成を伴う不斉脱芳香族化反応の開発が可能になると期待される。そこでまず含窒素芳香族化合物であるピロールについてDFT計算を用い、電子求引性官能基導入によるLUMOのエネルギーの変化について計算した。その結果、エステルおよびCbz基をピロールに導入するとLUMOのエネルギーが大きく低下することがわかった。そこでこの基質に対し、既報の反応条件を参考に、不斉銅(I)触媒系を探索、設計することで、ピロールに対する高活性かつ高ジアステレオ、高エナンチオ選択的な不斉脱芳香族ホウ素化反応を達成した。さらに得られた光学活性有機ホウ素化合物に対し、種々のアルデヒドを作用させるアリルボレーション反応を行うことで、複数の不斉中心を有する多様な含窒素環状化合物の合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロールに対する不斉脱芳香族ホウ素化反応の開発について、適切な触媒系および反応条件を精査することによって、反応が良好な収率で進行することを見出した。さらに得られる光学活性有機ホウ素化合物に対し、種々のアルデヒドを作用させることによって、複数の不斉中心を有する多様な含窒素環状骨格を構築することにも成功した。 C-B結合形成をともなう不斉脱芳香族化反応は、当研究室の報告以降発表された数例のみにとどまっており、脱芳香族化反応の開発研究の中でも未だ発展途上の研究である。今回申請者が取り組んだ研究テーマも非常に先駆的なものであり、これらの反応の達成は容易ではないことが予想されていた。そんな中、目的の不斉ホウ素化反応が良好な反応性で進行したことは特筆すべき点である。今後は得られる生成物のさらなる変換反応の開発にも取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は最適化された反応条件を基に、5位に官能基を有するピロールに対する不斉ホウ素化反応についても検討する。反応が十分に進行しない場合、配位子等の条件を検討する。また得られたホウ素化体の変換反応を検討する。酸化やアリルボレーションの他、種々の変換反応により3-ヒドロキシプロリン等の有用な化合物の合成を目指す。またDFT計算を用いてエナンチオ選択性発現メカニズム等の解明を目指す。
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