2019 Fiscal Year Annual Research Report
グスタフ・クリムト晩年の女性肖像画における中国的要素とパトロネージの統括的研究
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17J00821
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| Research Institution | Osaka University |
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Principal Investigator |
尾﨑 登志子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2021-03-31
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| Keywords | グスタフ・クリムト / 世紀転換期ウィーン / 肖像画 / 東洋美術研究 / 中国美術 / 第一次世界大戦 / 異文化受容 / 比較文化史 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
予定していた通り、今年4月に東京都美術館で「クリムト展－ウィーンと日本1900」と題された展覧会の開催を契機に、肖像画を中心としたクリムト作品に関する調査、および画家の東洋美術研究および受容に関わる資料の収集を行った。そして、同時期に開催された「ウィーン・モダン展」（於国立新美術館）でも、世紀転換期のウィーンに関する包括的な資料や最新の研究成果を目にする機会を得た。これらの展覧会は、本研究に関連する日本国内では最大規模の展覧会であり、また過去最多のクリムト作品を展覧するものであったため、非常に有意義な作品調査を行う機会となった。
また、20世紀初頭のドイツ・オーストリアにおける中国美術研究に関する調査も、昨年度から継続して進めている。具体的には、『東亜雑誌 Ostasiatische Zeitung』をはじめとする東洋美術の研究雑誌や、オスカー・ミュンスターベルクなどの東洋美術研究者たちが著した書籍を中心にテクストの調査を行い、第一次世界大戦前後のドイツ語圏における東洋美術研究の諸相を分析した。その結果得られた考察を研究ノートとしてまとめ、成果発表を行った。
さらに、先学の研究で注目されていなかったウィーンの東洋美術の蒐集家や中国美術に造詣の深かった作家にも焦点をあて、クリムトとの影響関係について昨年度ウィーンで集めた資料を基に検証を行った。この点についての先行研究は乏しく、情報も不十分であるため、今後ウィーンでの資料収集も検討しながら調査を進めたいと考えている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記で述べたとおり、クリムトや世紀転換期のウィーンに関する大規模な展覧会に際して作品の調査および資料の収集を国内で行うことが出来たという点では、当該研究を進める上で重要な機会となったと言える。そして、未だ調査中の段階ではあるものの、ドイツ語圏における東洋美術研究という本研究と大きく関わるテーマについても一定の成果を得て、発表することが出来た。
残念ながら、予定していた海外誌への論文投稿は出産・育児における中断期間前には達成できなかったため、研究復帰後第一に取り組む課題としたい。
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| Strategy for Future Research Activity |
育児休業からの復帰後、まず英国の美術史研究雑誌であるThe Burlington Magazineでの成果発表を目指し、原稿の加筆修正をし、論文を投稿する。
そして、第一次世界大戦前後のドイツ語圏での東洋美術研究や、ウィーンの芸術領域における東洋文化に対する関心のあり方を、継続的に考察する。それを踏まえた上で、クリムト個人の中国美術受容の様相をあぶり出し、晩年のクリムト作品における芸術性の変化や文化史的意義を改めて捉え直すことを試みる。その結果導き出した成果を以て、ハプスブルク史研究会など美術史以外の領域での学会発表を行い、学際的な知見を得たい。
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