2018 Fiscal Year Annual Research Report
イルカの早期妊娠診断マーカーの確立と臨床応用に関する研究‐miRNAを指標に‐
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17J00949
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
瀬川 太雄 三重大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | イルカ / ヘリコバクター属細菌 / 乳酸菌 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
miRNAを指標にした妊娠診断マーカーの検討をする中で,妊娠中のイルカは感染症等の疾病になることが多く,精度良く診断ができないことが多々あった.それ故,miRNAを指標にした早期妊娠診断マーカーを確立するためには,第一に国内飼育下イルカで多発している感染症の把握とその対策に向けた研究を行う必要があることが判明した.そこで申請者は,平成29年度から目的達成のために研究内容を変更し,飼育下イルカの多発感染症の調査とイルカ由来乳酸菌を利用した健康増進法の確立を目指した研究を行っている. 平成30年度,多くのイルカ飼育施設でイルカの受胎・分娩があった.その中で分娩後の母体が胃疾患により重篤な状態に陥った例を目の当たりにした.イルカの胃疾患はストレスや寄生虫感染,異物誤飲が主要因と考えられている.しかし,この母体は抗生剤の投与により状態が劇的に改善した.それ故,本疾患の主原因は細菌感染に起因する胃疾患であると考えられた.これまでイルカの胃組織から分離されたHelicobacter cetorumが,細菌性胃疾患の主原因として疑われている.そこで申請者は重度胃疾患のあるイルカの胃液からH. cetorumが高率に分離されるか調査した.しかし,興味深いことに重度胃疾患のイルカからH. cetorumとも,更には既報のヘリコバクター属細菌とも形態や生化学性状,分子系統学的に異なるピロリ菌と近縁関係にある新種のヘリコバクター属細菌が分離された(論文投稿準備中). また申請者は,イルカから広範の細菌に対して抗菌活性を示すロイテリンを産生するLactobacillus reuteriを分離することに成功した.特にその作用はイルカ由来細菌の中でも,上記2種のイルカ由来ヘリコバクター細菌に対して強い抗菌作用を示した.そして申請者は,イルカへの本乳酸菌の投与法を確立するために生化学性状を詳細に調べ,イルカに対して極めて安全性の高い投与法を開発することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miRNAを指標にした早期妊娠診断マーカーを確立するためには,第一に国内飼育下イルカで多発している感染症の把握とその対策に向けた研究を行う必要があることが判明している.そこで申請者は,平成29年度から目的達成のために研究内容を変更し,飼育下イルカの多発感染症の調査とイルカ由来乳酸菌を利用した健康増進法の確立を目指した研究を行っている.多発感染症に関しては,細菌性胃疾病に着目し,重度胃疾患のイルカからその原因と思われる新種のヘリコバクター属細菌を分離することに成功し,この内容を第24回日本野生動物医学会で口頭発表し,優秀口頭発表賞を受賞した.乳酸菌研究に関しては,イルカ由来Lactobacillus reuteriの生化学性状を詳細に調べ,イルカに対して極めて安全性の高い投与法を開発している. miRNAを指標にした早期妊娠診断マーカーを確立に向けた上記2点の研究に対する反響は大きく,イルカ飼育機関からの技術相談,指導依頼,共同研究の依頼が高まっている.また2017年7月に大分県津久見市で開催されたイルカ研究サミットや,2018年5月に開催された動物医科学研究センターセミナー(日本大学),2018年11月に開催されたマリンバイオテクノロジー学会の若手の会において,申請者は本研究の招待講演を行い,自身が特別研究員として活動中に得た研究成果を紹介しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
国内でハンドウイルカを飼育している複数施設を対象にした大規模なヘリコバクター属細菌の疫学調査を行い,胃疾患との関連性と国内イルカ飼育施設における蔓延状況を明らかにする予定である.また病原性が認められた場合は,感染経路の推定と予防法の確立,診断法の開発等を行い,妊娠イルカが感染しない,もしくは発症しない方法の確立を目指す.イルカから分離したL. reuteriのイルカへの投与実験を行い感染症予防効果があるか調べる予定である.
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Research Products
(11 results)