2017 Fiscal Year Annual Research Report
ポテンシャル散乱エネルギー領域中性子による元素・核種イメージングの実現
Project/Area Number |
17J01054
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 裕卓 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 中性子イメージング / パルス中性子透過分光法 / 元素密度 / 軽元素 / 複数元素 / 評価済核データ |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子は、強い物質透過能力とその反応性が元素・核種によって異なるという特徴を持ち、X線や電子線等では難しい、厚い物体内部にある元素・核種のイメージングを行える可能性を持つ。従来の中性子イメージング手法には、中性子ラジオグラフィ(NR)や中性子共鳴吸収イメージング(NRTI)といったものが存在するが、NRは複数の元素(核種)を分離して評価することが難しく、NRTIは軽元素(核種)の評価が難しいという課題があった。そのため従来手法では、複数の構成元素を持ち、かつその中に軽元素が含まれるような物体(例えばリチウムイオン電池や燃料ペレット)に対しては、元素・核種イメージングを行うことが困難であった。本研究では、ポテンシャル散乱エネルギー領域の中性子に着目し、軽元素を含む複数の構成元素・核種を持つ実用製品に対し、元素・核種イメージングが行える手法の開発を目的として研究を実施してきた。 本年度は、まず元素の評価手法を確立するため、3種類の元素(B, Ti, Pb)を試料として用意し、単体およびその組み合わせに対し、北海道大学の熱中性子源にて手法の適用実験を行った。その結果、単体試料においては、重量・体積から求めた実際の密度に対し数%程度の精度で元素の密度を評価することが出来た。また、組み合わせ試料に対しても、中性子断面積のエネルギー依存性が元素によって各々異なるため、それぞれの密度を10%以内の精度で評価できた。 さらに本年度は、実用製品への応用の足掛かりとして、AlとLiの2元素で構成されるアルミリチウム合金の階段試料(リチウムイオン電池の模擬試料)を作成し、J-PARC MLFのBL10において本手法を適用した。その結果、厚みの異なる全ての段において、AlとLiを実際の密度から10%以内の精度で取得することに成功し、リチウムイオン電池への応用可能性を確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、元素・核種評価手法の確立のための実験データ取得が行えた。また、取得した実験データの一部から、B, Ti, Pbの密度に関しては、本手法により数%~10%程度の精度で評価が行えることを確認した。また、実用製品への適用に向けた模擬試料の評価も行い、リチウムイオン電池への応用可能性を確認した。今後は、評価手法の確立に向けたシミュレーション計算及び本手法のイメージングへの拡張が必要となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
元素・核種評価手法の確立のため、モンテカルロシミュレーションコード「PHITS」により、実験を模擬した体系でシミュレーション計算を行い、本手法がB,Ti,Pb以外の様々な元素・核種およびその組み合わせに対して適用可能であるかを調査する。また、中性子二次元検出器を使用し、イメージング実験を行っていく。
|