2017 Fiscal Year Annual Research Report
Sociolinguistic descriptive study of two varieties in Mbugu/Ma'a in Tanzania
Project/Area Number |
17J01084
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安部 麻矢 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | バントゥ諸語 / 社会言語学 / 言語接触 / テンス・アスペクトの文法化 / フィールド言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、周辺言語のマア語への影響と、内マア語と外マア語の地域による語彙の差を調査・分析することを目的とした。 まず、既に収集済みのマア語のデータを整理し、周辺言語のシャンバー語やタンザニアの国家語であるスワヒリ語の影響について分析を行った。その結果6月25日に日本言語学会154回大会にて、語彙レベルと関係節に見られるシャンバー語とスワヒリ語の影響について口頭発表を行った。 7月末から10月初旬にかけては、研究協力者をタンザニアのタンガ州に派遣し、現地調査を遂行してもらった。現地調査では、研究協力者はマアの人々のいくつかの地域を訪問しそれぞれの村で数人ごとに、研究員が作成した語彙調査票に基づき、聞き取り調査をし、ノートに書きとった。研究協力者の帰国後は得られたデータについて分析を行っており、2018年8月末にモロッコのMohammed V Univerisityで開催予定の9th World Congress of African Linguisticsでの口頭発表の申し込みをし、発表が決定した。この点については、さらなる調査とそれによる分析が必要であるため、次年度以降にも継続していく。 先述の、マア語における周辺言語の文法レベルの影響のうち、特にスワヒリ語の影響について、10月にロンドン大学において発表を行った。12月には、バントゥ諸語研究者出席により行われているバントゥ諸語勉強会にて、マア語のテンス・アスペクトの文法化について発表を行った。発表において他の出席者から得た意見を基に、さらなる考察をし、論文の執筆をしているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、代表者本人は行くことができなかったが、研究協力者を派遣し、現地と連絡を取り合いながら、代表者が用意した質問票に従い、話者への聞き取り調査を実施し、期待していた量のデータを収集することができた。 成果公開については、10月にドイツのブレーメン大学で開催された、混合言語に関するコロキアムでの発表が決定していたが、事情によりキャンセルとなった。しかしここで発表予定であったペーパーを2018年8月に開催される予定の9th World Congress of African Linguisticsで発表することが決定したため、カバーできた。雑誌投稿ができなかった点については、次年度に持ち越した分多くの成果を上げていく。 代表者はまた、本研究課題と関連のある、バントゥ諸語のマイクロバリエーション研究のプロジェクトにも共同研究員としてかかわっている。このプロジェクトの研究会でマア語のデータと他のバントゥ諸語のデータとを比較したことにより、マア語がバントゥ諸語とは異なる振る舞いをしていることに気づくことができ、今後の研究への大きなヒントが得られた。この点については、さらに関連文献を読み込み、データの分析をしていき、今後成果の公開を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度のタンザニアでの調査において重視したのは、地域による変種の差である。地域差についてはこれまでの調査でも観察されていたが、今年度の調査により、ある地域の村では、内マア語と外マア語のそれぞれの特徴を有する変種が話されていることが示唆された。これについて、次年度以降において、より詳しい語彙・文法調査を実施し、内マア語と外マア語のどの部分を有する変種なのか明らかにしたい。またこの変種の話されている地域でこの変種が一般的なものなのか、何か特定の集団 (年齢・性別・クランなど) により話されているものなのかについて、明らかにしたい。 また、文法研究としては、今年度取り組んでいた、テンス・アスペクトの文法化について論文にまとめ雑誌に投稿するとともに、同じくテンス・アスペクトのうち、過去の形式の体系についても分析し論文にまとめ、投稿する予定である。
|