2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01139
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
重田 泰宏 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 金属錯体 / 外部刺激応答性 / 発光性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、本研究目的達成のために必要と考えられる、キラルな空間群を示す結晶構造を有する白金(II)錯体の合成ルートの確立に注力した。未だ報告例の無い蒸気誘起発光性物質を創製するためには、多数の分子を合成・結晶化してその性質を調べる必要があるといえる。それを踏まえると、合成は容易に行える事が望ましい。 この条件に合致する合成方法として、まずキラルなカルボキシレートアニオンを有する白金(II)錯体の合成を試みた。検討の結果、適切なアニオンを有するカチオン性白金(II)錯体と、系中で中和反応によって発生させたキラルなカルボキシレートアニオンを室温条件下で反応させることで、容易に目的とする化合物が合成可能である事が分かった。合成した化合物群は、単結晶X線構造解析の結果、出発物質として用いたカルボン酸のキラリティを維持しており、キラルな空間群を示す事を明らかとした。この方法は、既報である化合物から一段階の反応によって多数の物質を容易に合成可能な点で有望である。 また、同時に有機配位子に直接キラリティを付与する合成方法の検討も行った。Pt(II)に配位させた際の発光性が広く研究されている2,2'-bipyridineや2-phenylpyridineを骨格とし、それらのカルボン酸誘導体からキラルアミドやエステルを合成した。これをPt(II)錯体の前駆体と室温条件で反応させることで、目的とする化合物が得られる事が分かった。この方法は、有機配位子の合成から出発して3段階の反応が必要にはなるものの、縮合させるアミンやアルコールを変える事で多数の中性のPt(II)錯体を得る事が可能である。また、この方法で得られた化合物群についても単結晶X線構造解析を行い、その結晶がキラルな空間群を示す事を明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする物性は未だ報告例がないことから、研究課題を遂行するには、候補となり得る化合物を短期間で多種類合成し、それらの性質を調べる必要がある。そのためには、目的とする物質を容易且つ迅速に合成できる方法の確立が重要である。当該年度はこの条件を満たす合成ルートを確立できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した合成方法を利用して、多数の化合物を合成し、蒸気誘起発光性を示すかどうかを調べる。再結晶条件によって結晶構造が変化し、それが蒸気誘起発光性へと影響を与える可能性があるため、得られた化合物は複数の条件で再結晶を行って、蒸気誘起発光性の有無を調べる予定である。
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