2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム・生殖隔離・自然選択から迫る送粉適応形質の平行進化
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17J01165
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
廣田 峻 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 種分化 / 送粉 / MIG-seq法 / 種間交雑 / Hemerocallis |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ウラジオストク植物園との共同研究を進め、プリモルスク地方での現地分布調査および標本庫調査を行った。日本に加え、これらの調査により得られたロシアおよびモンゴルのキスゲ属12分類群117集団1079個体を対象として、次世代シーケンサーを用いたゲノム縮約解析を行い、一塩基多型(SNP)情報に基づいた遺伝的集団構造解析に取り組んだ。 全サンプルの80%以上の個体が保有する435 SNPsについて、ADMIXTUREによる集団構造解析を行った結果、ロシアに分布する3種のうち、形質が安定していた集団に関しては夜咲種と昼咲種で明瞭に分化していた。ただし、ともに夕方開花し翌日夕方閉じる夜咲性一日花の開花パターンを示すマンシュウキスゲとホソバキスゲの間で遺伝的分化は検出されなかった。一方、幅広い表現型が見られた集団は表現型から予想された通り、夜咲種と昼咲種との雑種集団であることが支持された。ロシアに分布する昼咲種と夜咲種はどちらも花寿命が一日であることから、種間送粉が起こりうる時間が長い。このため、花寿命の長い種では、容易に種間交雑が起こりうることが示唆された。 さらに、集団構造解析により雑種の可能性が低い個体を対象に、系統解析を行ったところ、大きく3つのクレードに別れ、それぞれ昼咲性一日花と昼咲性半日花、夜咲性と対応した。昼咲性一日花のクレードでは、大陸に分布するオオゼンテイカと日本に分布するゼンテイカが大きく分化していることが示された。一方で、夜咲性のクレードでは、日本に分布するキスゲと大陸に分布するマンシュウキスゲおよびホソバキスゲの分化は小さく、ブートストラップ値も50%以下だった。これらの結果から、夜咲性のクレードで遺伝的分化が小さいことから、夜咲種における花寿命の進化は近年急速に起こった可能性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ロシアプリモルスク地方での分布調査を実施し、標本庫調査などを通して、モンゴルやサハリンなど広範な地域を対象に多数のサンプルを得られた。SNP情報に基づいた遺伝的集団構造解析も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したサンプルを対象に、種間・表現型間で分化した中立進化から外れる遺伝子座(outlier loci)を網羅的に探索する。中立な遺伝子座を用いて集団動態推定を行うとともに、outlier lociと中立な遺伝子座、母系遺伝する葉緑体ゲノム上の遺伝子座の系統関係を比較するしていく予定である。
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Research Products
(3 results)