2017 Fiscal Year Annual Research Report
2歳児における1歳児に対する関わりの生起過程モデル
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17J01220
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
北田 沙也加 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ベビースキーマ / 養育的行動 / 乳幼児 / トドラー |
Outline of Annual Research Achievements |
大人だけではなく,幼児も2歳頃から自分より幼い乳児に対して頭をなでる,物を与える,世話するといった養育的行動をするが,なぜ自身も養育を必要とする2歳頃から乳児に養育的行動を行うのか,そのメカニズムは明らかでない。本研究では,周囲の養育を引き出すとされるベビースキーマに焦点を当て,幼児期におけるベビースキーマ選好と養育的行動との関係性について検討した。 平成29年度は2~5歳児を対象に3つの注視実験調査,及びその母親を対象に質問紙調査を実施した。実験1では乳児の顔写真,実験2では乳児の歩行動画を刺激とし,それぞれ幼児,成人女性のものと対提示して乳児らしい顔や動き(ベビースキーマ)への注視選好を調べた。その結果,一貫して成人女性への強い選好が示されたが,乳児刺激と幼児刺激の対提示では特に2~3歳と幼い実験協力児において,幼児よりも乳児刺激への選好が見られた。実験3では乳児,幼児,成人女性の三者が一緒に写っている保育場面の写真を刺激とし,日常的な文脈におけるより能動的な乳児選好を調べたところ,全体的に幼児よりも乳児や成人女性への選好が見られた。また質問紙調査で母親に評定を求めた実験協力児の乳児に対する養育的行動表出(どのくらい乳児に養育的行動を行うか)と注視データとの関連を調べ,2~5歳児の養育的行動に影響する要因を探索的に検討したところ,実験3の選好注視で養育的行動との関連が強く示された。2~3歳児では日常的な場面で幼児をあまり見ず,乳児をよく見る幼児が養育的行動(特に愛撫)を表出しやすいが,4~5歳児では選好注視と養育的行動は関連していなかった。このことから,幼児のベビースキーマ選好と実際の乳児に対する養育的行動との関連は,日常的な文脈での刺激で顕著に見られること,幼児期初期と後期で養育的行動に影響する要因が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた注視実験調査,質問紙調査を実施することができたため,計画通りに研究が進んでいるといえる。特に多様な刺激を用いて複数の注視実験調査を行ったことで,幼児のベビースキーマ選好を多面的に捉えることができた。またベビースキーマ選好と養育的行動との関連について,日常的な場面における能動的な乳児選好が養育的行動を促進させることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,日常的な文脈における能動的な乳児選好が養育的行動を促進させることが示唆された。そのため,今後は乳児,幼児,成人女性の三者が写っている写真刺激を用いた注視実験調査に焦点化し,よりデータ数を増やして注視選好と養育的行動との関連についてより明白で強健な結果を得られるよう研究を進めていく。また29年度に実施した注視実験2では,動画刺激の被写体の大きさが選好に影響した可能性が挙げられるため,大きさを統制した動画刺激を用いた追加実験調査を行い,乳児らしい動きへの選好について再検討する。そして幼児期,特に2歳児における乳児に対する養育的行動の生起過程について考察するため,幼児のきょうだい数や気質,親の養育態度といった背景要因が幼児のベビースキーマ選好や養育的行動にどのように影響するのかを調べる。
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Research Products
(6 results)