2017 Fiscal Year Annual Research Report
経済的困窮と相対的剥奪感が格差是正態度に及ぼす影響
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17J01448
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
申 在烈 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 格差是正 / 所得再分配 / 福祉国家論 / 相対的剥奪 / 福祉レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究目的は格差是正態度のメカニズムを説明することである。ただし、これまでの先行研究では所得水準に焦点を合わせたことに比べて、申請者は所得の具体的な内容と主観的解釈に注目した。このような研究目的に基づいて、申請者は世界価値観調査、SSM調査、SSP Projectのデータを用いて研究に取り込んできた。申請者の研究成果はおおむね3つである。 1.査読論文は1つである。この論文ではOECD諸国を対象にして相対的剥奪感が再分配支持に及ぼす影響を明確にした。既存の研究では所得、ジニ係数のような物理的な経済的条件がそのまま再分配支持に影響を与えると論じたことに比べてこの論文では再分配支持が主観的意識によるものであることを提案した。 2.SSM調査に報告書を提出した。この報告書論文では高まる一方である非正規雇用比率と再分配支持の関係を検討した。再分配支持は不平等を是正する道具として理解できる。とすると、貧困をもたらす非正規雇用に従事しているあるいは非正規雇用になりやすい状況であれば、再分配支持を保険として認識して非正規雇用のリスクが低い労働者に比べて再分配をより積極的に支持する可能性が高い。この研究では産業別非正規雇用比率を非正規雇用リスクとして扱った。分析結果、労働市場においての地位が高いほど、リスクにより敏感に反応することを確認できた。高層つよりは大卒が、下層階級よりは上層階級の方で非正規雇用リスクに反応した。 3.最後に移動レージム研究会に報告書を提出した。この報告書では欧米諸国で検討されてきた人間価値理論が日本社会においてどれくらい適しているかを確認した。分析結果、欧米諸国を対象として開発された人間価値理論を異なる文化圏である日本社会適用することは難しい。ただし、構造は異なるが、利他主義と再分配支持に一定の関係があることは確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者の研究は論文の作成事態は計画通りであるが、査読の遅れなどにより研究成果の数は少々足りない。
相対的剥奪感のメカニズムを検討した1番目の査読論文はsocial indicators research(SSCI)に順調に投稿完了となった。この研究では世界価値観調査6次データを用いてOECD諸国において相対的剥奪感と再分配支持の関係を考察した。 2番目の論文はコミュニティ活動への参加により、自己利益と再分配支持の関係がどのように変化するかに注目した。分析結果によると、先行研究で主張しているように再分配支持は自己利益によって異なるが、コミュニティ活動に積極的に参加すると、自己利益の効果が緩和されることを明確にした。ただし、この研究は当初掲載を狙ったjournal of social policyの査読で落ちってしまい、social indicators researchで査読中である。この雑誌での評価は悪くなかった。現在major revisionを受けてもう一回査読中である。 3番目の論文は社会学評論に投稿し今現在査読結果を待っている。この論文では家庭内においての所得不平等の問題を扱っている。福祉レジームの議論によると、再分配支持は家庭内においての経済力不平等の問題も反映するこてである。 申請者は以上の三つの論文を2018年3月までに掲載されることを1年目の研究成果として企画していたが、結果として投稿はできたが、査読の結果までいただくことまでは及ばなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これからはより深く主観的解釈と再分配支持の関係を考察するつもりである。
まず最初に、SSM調査の報告書をより巧妙に修正して海外の雑誌に投稿するつもりである。 その後、主観的解釈と再分配支持の関係を全体的に網羅する研究論文を作成して海外の雑誌に投稿するつもりである。つづいて、再分配支持に関する先行研究を総括するレビュー論文を作成してころを海外に投稿する。加えて、この研究では再分配支持に関する実例も同時に検討する。まず、最近いい例として挙げられているCANADAを福祉政策を検討する。これのために、直接Canadaを訪問して必要な資料を収集する。同じく日本の事例も検討する。今回は島根県のケースを検討するつもりである。島根県は厳しい人口流出を経験している。そのうえ、産業基盤も衰弱である。島根県県という多少極端な例を検討することにより、日本全体においての再分配支持の実在する構造を把握することができると考えられる。 このような研究成果をもとにして博論を執筆する。博論では去年東湖済みの1つの査読論文、2つの報告書論文、査読結果待ちの2つの論文、新しく投稿する予定である3つの論文、2つの事例検討を包括的に検討する。 これをもって、主観的解釈と再分配支持の関係を考察するこの研究プロジェクトを完結させる。
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Research Products
(8 results)