2017 Fiscal Year Annual Research Report
日本社会における技能形成・評価メカニズムを通じた制度的不平等の研究
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17J01483
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 和孝 慶應義塾大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 社会階層 / 不平等 / 技能形成 / 学校から仕事への移行 / 政策選好 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本社会において技能形成およびその評価プロセスを通じて、どのように制度的な不平等が生まれているかを探求することにある。特に学校から仕事への移行や、内部労働市場という教育訓練制度の特徴に注目しつつ、社会学における社会階層論の視座に主に基づき、どのようなグループの人々がより不利に直面しやすいのかが分析される。 当該年度は、研究課題全体を捉える上でのフレームワークを洗練させることに注力した。理論的な枠組みとして、社会階層論および隣接領域における、技能形成と不平等に関する研究のレビューを行った。より具体的には、 近年のヨーロッパ社会学における「技能の透明性」(skill transparency)の議論は本研究課題の解決にとっても有力であると判断された。 また、学校から仕事への移行プロセスの分析を行った。教育社会学においては、生徒の求職プロセスにおいて学校が積極的な役割を担うという、「学校経由の就職」が日本において存在することが指摘されてきた。そして近年起きている高等教育への進学の拡大と若年労働市場の悪化の中においても、こうした学校経由の就職は良好な就業機会を得る上でなお重要であるかどうかを分析した。 くわえて、日本社会において人々がどのような社会経済的システムを望ましいと思っているかという、政策選好の分析を行った。人々の不平等を是正するための社会制度として社会保障があるが、この規模を決める要因として、重要なのは人々の世論である。ある社会政策は政治家や官僚によって主には決定されるとはいえ、世論を反映する部分が少なからずあるためである。こうした背景を踏まえて、政府による公的支出の拡大(高福祉・高負担)を人々がどれほど望んでいるかが変化しているかどうかを分析した。また、教育の分野に焦点を当て、公教育支出を拡大することを望んでいるのはどのような人々であるかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はいくつかの研究成果をすでに発表したと同時に、計画通り在外研究の予定を進めている。これを踏まえて、期待通り研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は採用の第二年度にあたり、初年度以上に成果を出すことに注力する。また、引き続き在外研究の期間にあたることから、現地の研究者と積極的にディスカッションを行い、自身の研究への示唆を得ることに努める。
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