2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01487
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大塩 祥剛 立命館大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 快音化 / 和音 / 歯科治療音 / 聴覚マスキング / 制御音 / 楽器音 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、まず研究対象とする騒音源試料を拡充するために、歯科治療騒音の収集に取り組んだ。歯科治療騒音は、従来の騒音抑圧手法では対策が困難であり、歯科治療時のモーター回転や歯の切削・研磨により発生する。複数の医院において計40 名以上の患者に対して、それぞれ歯科治療騒音と対応する治療器具を記録した。音響的特徴量を分析した結果、多数の歯科治療騒音にて不快要因となる高周波数帯域のピーク成分(局所的に強いパワー)を確認した。また、ピーク成分が発生する周波数は使用する治療器具の種類に依存し、治療者が制御する治療器具のモーター回転に起因して時間的にその周波数が変化することも確認した。一方で、患者の年齢や性別などの違いにより、音響的特徴量が大きく変化しないという傾向を明らかにした。 次に、騒音の特徴に頑健な快音化手法の確立に取り組んだ。これまで、騒音のピーク成分に対して和音の規則性に沿った制御音を付与する快音化手法を検討したが、制御音の人工的な音色が課題となった。提案手法では、制御音の音色をより自然な快音に近付けるため、楽器音の特性を持つ和音構造を付与する快音化手法へと発展させた。特に、和音性の特徴量をもとに最適な楽器音を選択することで、騒音の特徴に適応的な快音化を目指した。 実際に歯科治療騒音を対象として、快音化効果を検証するために主観評価実験を実施した結果、大幅に快音化効果を向上することができた。これらの成果をまとめ成果として、INTER-NOISE 2018(査読付・国際会議)に採択され、発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は、ベースラインとなる手法と比較して、本提案手法により騒音に対する快音化効果が大きく向上したことである。 一方で、快音化効果を確認できた条件は限定的であるため、より幅広い騒音に対して有効性を確認するとともに、パラメータを詳細に決定するための分析および実験をする必要がある。 以上2点を踏まえて「(2)おおむね順調に進展している。」という自己評価になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、当初の研究計画と変わりなく、次の2点を実施する。1点目は騒音の特徴を自動分析し、最適な制御音を自動設計する快音化理論を構築する。2点目は実証実験を行うためにオンライン処理での快音化システムの開発を目指す。特に、2点目は単にオンライン処理をするだけではなく、遅延時間(ADDA変換、計算処理時間、スピーカから受聴者までの距離)の考慮、スピーカ・マイクロホンの配置・個数などのデバイス筐体の検討を行う。
|