2017 Fiscal Year Annual Research Report
Cognitive and neural basis of romantic love using fMRI and tDCS
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17J01776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 竜平 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 恋愛 / fMRI / 自己制御 / 潜在的姿勢 / 意思決定 / 社会的認知 / 対人認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
一夫一妻的配偶形態はヒトの現代社会において多く観察されている一方、どのような認知神経機構がその維持を可能にしているかについては、依然として一貫した説明が行われていない状況にあった。 本研究では、機能的磁気共鳴画像法 (functional magnetic resonance imaging, fMRI)を用いた心理実験を通し、そうした関係の維持を可能にする機構を、行動と脳の両面から明らかにすることを目指した。これまでの研究結果から、非常に魅力的な異性に対する「浮気的」な関心を抑制する上では、従来提案されていた能動的・顕在的な抑制機構に加え、「浮気的行為」に対するネガティブ情動の喚起による自動的・潜在的な抑制機構も必要になりうることが示された (Ueda et al., 2017, Cognitive, Affective, and Behavioral Neuroscience)。また、これら2つの機構の関係性は交際段階によって変動しうることが示された (Ueda et al., 2018, Experimental Brain Research)。すなわち、パートナーに対する愛着やコミットメントが強く示される関係の初期では、能動的・顕在的な抑制が伴わずとも、浮気的関心が抑制される一方、長期的な関係になると、そうした機構が抑制に関与するようになることが示唆された。これらの検討を通し、「我々ヒトの社会において広く観察される一夫一妻的な関係が、どのようにして維持されているか」という文化人類学的問題に対し、実験的エビデンスに基づいた説明を提案することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の2件の研究はいずれも、すでにプロジェクトを完了しており、当初の研究計画の大半を達成することができた。それらの成果は、国内外の学会、および2件の国際学術誌において報告を行った (Ueda et al., 2017, Cognitive, Affective, and Behavioral Neuroscience; Ueda et al., 2018, Experimental Brain Research)。現在は主に、意思決定を支える身体反応の側面に焦点を当てた、発展的な検討を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究では、親密な関係の維持に関する認知神経機構を明らかにする研究を報告した。一方でこれまでの研究は、「脳のどの領域が関与するか」を検討するunivariate fMRIの手法に限定されており、間接的な考察にとどまっているという問題点があった。今後の研究では、機械学習を用いた先進的な手法であるmultivariate fMRIを用いることで、「脳のどの領域が関与するか」に加え、「その領域が、どのように認知機能を支えているか」をより直接的に明らかにすることを目指す。こうした手法は近年のfMRI研究で盛んに用いられ始めており、本研究の実施は、社会的認知の研究全般に応用可能な手法を提案することにもつながることが期待できる。 fMRIを用いた神経機構の検討に加えて、非侵襲的に脳活動の局所的変化を誘発できる手法である経頭蓋直流刺激 (transcranial direct current stimulation, tDCS)を組み合わせることで、特定の脳領域の活動変化が意思決定にどのように影響するかという、因果関係の検討も併せて行う。 これらの研究は、国内外の研究者との共同研究プロジェクトとして実施し、申請者は実験計画の立案と実験の実施、データ解析、および論文執筆のすべてにおいて中心的役割を果たす予定である。
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