2017 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレータ検出器でのマヨラナニュートリノ発見に向けた研究開発
Project/Area Number |
17J01788
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾﨑 秀義 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | マヨラナニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ / キセノン / 光電子増倍管 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の観測は,ニュートリノのマヨラナ性の証拠であり,ニュートリノがマヨラナ粒子だと証明することで,ニュートリノの軽い質量や,宇宙の物質優勢の謎に迫ることができる. KamLAND-Zenは,二重ベータ崩壊核である136Xeを含むキセノンガス入りの液体シンチレータをミニバルーンの中に入れて,そのミニバルーンを大型液体シンチレータ検出器であるKamLAND内部にインストールし,ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索を行う実験である. 現在, キセノンガス約800kgを用いたKamLAND-Zen 800に向けての準備を進めている.また, 現在のKamLAND検出器をエネルギー分解能向上に着目して改良することで,さらなる高感度での二重ベータ崩壊実験を行うKamLAND2-Zenに向けた研究開発も行っている. 本年度は, キセノン約400 kgを使用した以前のミニバルーンよりも大型のミニバルーンを, 以前よりも清浄な環境下で作製した. 研究者自らが, クラス1以下のクリーンルーム内でミニバルーン素材の洗浄, 溶着を行い. 直径約4 mのミニバルーンを完成させた. また, 溶着部分には,ピンホールができることがあるが, Heガスをミニバルーンに充填し,バルーン外部で,バルーン内部から漏れ出てくるHeガスを検出することで,全てのピンホールを特定し, 修復した. KamLAND2-Zenに向けての研究では, 現在の検出器で問題の発覚しているPMTの大光量の下での振る舞いについて調査中である. 現在のところ,新型のPMTに問題は見つかっていないが,液体シンチレータとの相性等を含め,更に調査を進める予定である. また,現在KamLAND検出器で使用中のPMTのゲイン調整や, PMTの取り扱い方法の見直しを行い,出力の低下する問題が起こるPMTの増加量を抑えることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マヨラナニュートリノ発見に向けては二重ベータ崩壊核であるキセノンの倍増と検出器の高エネルギー分解能化の2つの側面から研究開発を行なっている。これらのうちキセノン倍増を目指すKamLAND-Zen 800においては、倍の量に対応したサイズを有しさらに極低放射能化を実現したミニバルーンの製作が中心課題である。2016年の製作では放射性不純物量を10分の1に低減することに成功したものの、導入までの間に溶着部分に小さな亀裂が生じてしまった。溶着手法を見直し最適パラメータを探索することで最終的に2倍程度の溶着強度を達成し、新溶着手法でのミニバルーン製作を行なった。クリーン度の維持、リーク検出及びその補修を含め多大なる作業工程であったがは年度内に無事に完成させ、KamLAND内への導入を待つばかりに至った。また、作業中もKamLANDを安定的に稼働させ解析プログラムの最適化を継続する必要があるが、これらを的確に成し遂げ、特に光センサーの故障率低減に成功した。全体のスケジュールは遅れ気味ではあるが、光センサー故障率の改善などと合わせて期待通り研究が進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
キセノン800 kgとか仕込めるだけの液体シンチレータ容器であるミニバルーンが完成したので,このミニバルーンをKamLAND検出器にインストールし,液体シンチレータで充たしながら膨らます. データ解析やカメラ映像等からミニバルーンに異常がないこと,バックグラウンド事象が十分に低いことを確認したのち,キセノンガス約800 kgを溶かし込むことで,二重ベータ崩壊の観測を開始する予定である. 観測開始後は, 申請者がデータ解析を行い, ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の半減期または, その下限値を決定する. KamLAND2-Zenに向けた開発も引き続き行う.
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