2018 Fiscal Year Annual Research Report
適応的記憶忘却メカニズムの解明―行動およびfMRIデータモデリングの活用―
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17J01808
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三好 清文 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 意思決定 / メタ認知 / 確信度 / 再認記憶 / 意識 / 精神物理学 / 信号検出理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計的決定理論に立脚し、記憶情報もしくは知覚情報に基づく意思決定の成立基盤を明らかにするべく研究を実施した。また、自分自身が下した意思決定についての自己認識、すなわちメタ認知を実現する情報処理の実態を明らかにするため、行動実験およびコンピュータシミュレーションを行った。 今年度の前半は、自分自身の記憶の確かさについての信念(メタ記憶)に焦点を当てた研究を行った。メタ記憶を実現する心的情報処理を明らかにすべく、統計的意思決定理論(信号検出理論)に立脚する心理実験を考案・実施した。ここで得られた主な成果はJournal of Memory and Language誌に掲載されたほか、追加の研究結果についても他誌に投稿中である。 今年度の後半からは、研究拠点を香港大学に移しHakwan Lau教授と共に意思決定及びメタ認知の研究を行った。メタ認知の計算過程についてのコンピュータシミュレーションを中心に行い、これまでの信号検出理論に基づく意思決定行動の評価体系を大きく改定する発見を得た。過去の理論が暗黙のうちに置いていた仮定・制約を取り外し、より現実的な状況設定のもとで生じる複雑なパターンを精査し、その中に現れる単純な法則性を見出した。これにより、従来的には説明不能もしくは理論的限界値を超えていると考えられていた様々な現象を、特別な仮定を加えることなく説明した。さらに、潜在記憶、閾下知覚、盲視といった「意識状態」に特徴づけられる現象の背景にある数理を節約的に示した。本研究成果はPsyArXivにて公開済みであり、学術雑誌への投稿を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
記憶情報に基づく意思決定およびメタ認知の数理基盤を明らかにし、当初の予定通り分野のトップ誌であるJournal of Memory and Language誌にて成果を発表した。 これに加え、研究の対象を、知覚情報に基づく意思決定や盲視現象などにおいてみられる無意識的認知へと拡張した。信号検出理論に基づく従来的議論をより一般の場合へと拡張し、以上の諸現象を統一的に説明する理論的枠組みを構築した。このように、当初の計画の枠を超え、メタ認知や意識の問題全般に関わる理論的貢献を成し遂げた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からはカリフォルニア大学ロサンゼルス校にて、Hakwan Lau教授と共に意思決定やメタ認知の研究を進める。特に、今までに得られている理論的予測を実験を通じて確かめることが中心となる。
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