2017 Fiscal Year Annual Research Report
全面的集団化期の中央アジアにおける遊牧・農耕経済の研究
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17J01899
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
植田 暁 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 中央アジア / 社会経済史 / 集団化 / 歴史GIS / 遊牧民 / 綿花モノカルチャー / ウズベキスタン / カザフスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、事項1「遊牧地域の集団化と遊牧的伝統」、事項2「全面的集団化期における中央アジア農村の変容の解明」、事項3「中央アジアにおける反集団化運動の展開」の3つの研究事項に沿って全面的集団化によって中央アジア農村部がどのように変容したのかを解明することを目指すものである。 事項1に関して、カザフスタン共和国において文献調査を実施した。国立中央文書館においてカザフ遊牧民の定住化と集団化に深くかかわった国家機関の公文書を調査し、遊牧民定住化、人口減少、家畜減少、カザフ人の国外逃散と帰還者救済事業、農業問題と食料・飼料問題などに関する多くの重要史料を収集した。帰国後、統計データのGIS分析を開始し、記述データに関しては項目ごとの整理と他の史資料との比較を進めている。 事項2に関して、1920年代末から1930年代初頭の綿花モノカルチャーの状況を中心に当時の新聞資料なども活用した再検討を行った。その成果を北海道中央ユーラシア研究会において「1920年代中央アジアの食糧危機と綿花:フェルガナ地方を中心に」として報告した。またオアシス経済の発展過程をエスニック集団の人口史と関連付けて復元し、比較経済体制学会全国大会において「歴史GISを用いた中央アジアのオアシス拡大に関する分析」と題した報告を行った。目下、同内容についての論文を準備中である。 事項3「中央アジアにおける反集団化運動の展開」に関して、スラブ・ユーラシア研究センター所蔵の中央アジア新聞資料を調査することで、1920年代後半から1930年代前半における反集団化運動に関する情報を網羅的に整理し、中央アジア南部における反集団化運動のデータベースを作成した。そのデータベースを基に運動の質的および量的な特徴とその背景の分析を実施している。関連史料との比較検討を実施し、学会報告の形式で研究成果を発表する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画で予定していた、北海道大学所蔵のPravda Vostoka紙を初めとするソ連初期の定期刊行物の集中的調査、中央アジアにおける全面的集団化期に関する史料情報のデータベース化と地理情報のGIS基礎処理、カザフスタン共和国国立中央公文書館における史料調査、比較経済体制学会における研究報告などをほぼ予定通り実施することが出来た。 調査手続きの都合からカザフスタンにおける調査は約1ヶ月間とし、多くの重要な史料を収集することが出来た。特に国立中央文書館においてソ連初期カザフスタンにおいてカザフ遊牧民の定住化と集団化に深くかかわったカザフ自治ソヴィエト社会主義共和国ゴスプラン(国家計画)、同人民委員会議、同定住化委員会などの機関の公文書を調査し、遊牧民定住化、人口減少問題、家畜減少問題、カザフ人の国外逃散問題と帰還者救済事業、農業問題と食料・飼料問題などに関する多くの重要な一次史料を収集した。また、次年度以降の現地調査の準備および論文執筆のための補足資料収集のためにウズベキスタンにおける短期調査を実施した。 比較経済体制学会における報告内容の論文化に関して、当初計画では邦語での論文執筆と国内学会誌への投稿を予定していたが、研究の進展により報告内容が当初予定の中央アジアへのロシア人入植者の問題から中央アジアのオアシスにおける多様な集団の入植とオアシスの空間拡大というより一般的な内容に発展したことを考慮し、英語論文として執筆することを選択し、目下投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究活動がほぼ当初予定通りに進行したことを踏まえ、30年度、31年度における研究活動を科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)(特別研究員)研究計画調書予定に記した当初予定に沿って進める予定である。 具体的には30年度、31年度においてロシア・サンクトペテルブルクおよびモスクワ所在の各種公文書館、 図書館における史料調査、ウズベキスタンおよびキルギスにおける史料収集、ソ連期の中央アジア農村に関するインタビュー現地調査などの海外調査を実施する。 初年度に引き続き、国内外の学会における口頭報告および投稿論文などの形式による積極的な成果発表を続行する。 中央アジアおよびロシアに関しては、調査・研究活動の遂行に関わる環境や状況が短期間に大きく変化してきたという経緯が存在するが、現在のところ30年度、31年度の本研究計画に修正を必要とする外部的問題は発生していない。
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Research Products
(3 results)