2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J01920
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂本 勇樹 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 水素二相流 / ボイド率 / 電場解析 / クオリティ / 流動様式 / 圧力損失特性 / 熱伝達特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではボイド率に着目した水素沸騰二相流の流動特性の解明について取り組んでいる.液体水素は20Kで沸騰する極低温流体に分類される.本年度は主に極低温気液二相流の流動特性を解明するのに必要な①ボイド率計の設計・製作,②流動試験装置の構築,および③流動試験を実施した. ① ボイド率計の設計・製作:極低温流体のボイド率測定技術は確立しておらず,「静電容量型ボイド率計」をベースに,液体水素流動試験に向けた形状の最適化を行った.具体的には内径15 mmの配管を対象として,電場解析上あらゆる流動状態に対して約5%の誤差(95%信頼度)で測定可能なセンサーの開発に成功した. ② 流動試験装置の構築:水平管内での沸騰水素流動特性を評価すべく,真空二重配管構造を用いた,長さ約3000mm(うち2000mmが電熱加熱区間),内径15mmの水素流動配管を製作し,JAXA能代ロケット実験場にて組み立てを行った.29年11月の液体窒素試験をもって安全性および計測制御系統の健全性を検証した. ③ 流動試験:第一次流動試験を29年12月に,第二次流動試験を30年3月に実施している.第一次流動試験では,液体水素での安全性および計測制御系統の健全性の検証を目的とし,第二次流動試験では第一次試験の結果をもとに決定した条件での試験を実施した.その結果,質量流束20kg/m2s~110kg/m2s(供試体入り口で気液二相流となる条件を除くと50kg/m2s~110kg/m2s),ボイド率0~70%の範囲で,ボイド率,クオリティ,流動様式,熱伝達率,圧力損失を測定することに成功した.なお①で製作を行ったボイド率計は正常に動作し,20Kにおいても安定に運用できることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水素を取り扱う上での安全性と実験スペースの問題から一部装置の計画変更を行ったため,液体水素の流動試験開始が若干の遅れが生じた.しかしながら12月と3月に実験を実施したことにより年度内の実験計画は達成することでき,これらのデータベースの構築も完了した. 実験の解析状況については,まず,高精度なボイド率測定手法に基づきボイド率とクオリティの関係について整理し,液体水素で使用可能な「ボイド率-クオリティ換算モデル」と「熱平衡クオリティ-実クオリティ換算モデル」を提案した.本結果は水素二相流をマクロに評価するうえで基本となるモデルとなる.本モデルの構築は次年度に完了を目標としており,計画時以上に達成できたといえる.流動様式に関しては,高速度カメラによる可視化画像に基づき,質量流束とボイド率による判別方法構築に取り組んでいる.現段階で定式化には至っていないが過去に冷媒に対して提案されてきたモデルでは,気泡流領域を過少に見積もること,波状流領域を過大に見積もることなどが明らかとなっている.熱伝達特性については,液単相流領域に関してDittus-Boelterの式が適用可能であること,気液二相流領域についてはLockhart-Martinelliパラメタの逆数に比例して熱伝達率が上昇する傾向を確認した.流動様式判別に基づく,詳細なモデル化には現在取り組んでいる.圧力損失特性に関して,単相流領域ではDarcy&Weisbach式で,二相流領域ではLockhart-Martinelliパラメタによる二相摩擦乗数を用いて,その傾向をとらえられることが分かったが,既存予測モデルのほうが圧力損失を小さく見積もる傾向があることが分かった.この傾向は先行研究結果に一致するが,原因と新たなモデルの提案については現在取り組んでいる最中である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は申請時の計画通り,夏までを目途に流動様式の遷移モデル,流動様式判定に基づく熱伝達率の評価モデルと圧力損失の評価モデルを構築する.さらにこれらを統合した一次元の気液二相水素流れの流動モデルを構築することを目標とする.冷媒を対象に流動様式ごとに熱流動特性を評価し,モデルの高精度化を図った研究は存在するが,それを水素に対して拡張した例は存在しないため,本モデルは学術的にも工業的にもインパクトが大きいといえる.また,まずは本年度までの300kPaAまでの流動モデルの構築を目標とするが,現在計画時よりもペースを早めて解析を実施できているのでモデルの拡張を行うべく500kPa程度までの実験を夏ごろに予定している.本結果を基として秋を目途に気液二相水素流れの流動モデルの改良を実施予定である.並行して,ボイド率計の更なる高精度化を目標として温度ドリフトの改良,らせん型ボイド率計の開発,マルチ電極型ボイド率計の開発などを通じて,液体ロケットエンジンの開発などにも適用・実証を進める予定である.
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