2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01956
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅尾 泰彦 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | オービフォールド / ストリングトポロジー / マグニチュードホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続きオービフォールドのストリングトポロジーについての研究を行った。また自由ループ空間とHochschildホモロジーとの関わりから動機を得てマグニチュードホモロジーについての研究を行った。オービフォールドの自由ループ空間については対応するcrossed simplicial groupを調べるなどしたが大きな成果は得られなかった。マグニチュードホモロジーは豊穣圏に付随する二重次数付き加群であり、一般化されたHochschildホモロジーとして定義される。自由ループ空間のホモロジー群が鎖複体のHochschildホモロジーと同型であること、またリーマン多様体の場合にそれらの群が閉測地線の分布に関して豊かな情報を持っていることはよく知られた事実である。これを動機としてマグニチュードホモロジーがリーマン多様体の閉測地線に関する情報を持っていないか調べた。一般に距離空間は[0,∞ )上豊穣化された圏であるため、Alexandrovの意味で曲率が上から抑えられた測地的距離空間のマグニチュードホモロジーを計算した。結果として1. 閉測地線はマグニチュードホモロジーの非自明な類を代表すること 2. 曲率が上から抑えられた距離空間でCAT(k)でないもの、もしくは標準球面のマグニチュードホモロジーは閉測地線が無いほど消えること、を証明した。証明にはmetric geometryの一般論を用いた。従って上で述べた予想はおおよそ正しいことが確かめられた。マグニチュードホモロジーが閉測地線によって生成されるか調べること、マグニチュードコホモロジー積との関係、また正確な自由ループ空間及びストリングトポロジーとの関係の記述を今後の目標として研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オービフォールドストリングトポロジーをホックシルトホモロジーの観点から調べることが効果的に働いて、順調に成果が出ている。ホックシルトホモロジーは代数的な操作により幾何学的性質を取り出すことを可能にする有用な道具であることが再確認された。本年度はホックシルトホモロジーにより記述できる対象としてマグニチュードホモロジーに注目し、その性質をストリングトポロジーにおいて中心的な役割を果たす閉測地線の分布を調べることで一部解明することができた。ストリングトポロジーでは自由ループ空間のホモロジー群を調べることで測地線の情報を取り出したが、マグニチュードホモロジーはさらに測地線の長さに関する情報まで持っているためより精密な分布を知る手がかりになる。特に双曲多様体に対するセルバーグゼータ関数との関わりを調べることで数論的な研究との相補的発展が望めると考えている。オービフォールドストリングトポロジーの観点からも、マグニチュードホモロジーは距離空間に対する理論であり、オービフォールドを含む広いクラスの多様体に適用することができるためオービフォールドストリングトポロジーの研究を押し進めることに大きな寄与を果たすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の課題に取り組む。1. マグニチュードコホモロジーのカップ積と、ストリングトポロジーにおけるループ積との対応の解明。2. マグニチュードホモロジーと自由ループ空間のホモロジーの明示的な関係の記述。3. マグニチュードホモロジーのすべてのホモロジー類が閉測地線で生成されるかを調べる。4. マグニチュードホモロジーのマイヤービートリス完全列を、測地的距離空間に対して証明する。5. マグニチュードホモロジーの非自明なサイクルの存在する次元と、フラクタル幾何的次元との関係を解明する。6. 区間パーシステント加群を係数にもつマグニチュードホモロジーの理論を構築し、パーシステントホモロジーの理論との関連を解明する。7. 双極多様体に対して、マグニチュードホモロジーの非自明なサイクルの分布と、セルバーグゼータ関数との関連を調べる。 以上の課題解決のためには、これまでの代数トポロジー的手法だけでは十分でない可能性が大いにあるため、metric geometryや応用トポロジーの研究者との議論を積極的に行なっていくつもりである。
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