2018 Fiscal Year Annual Research Report
電流分布可視化による積層高温超伝導接合部の冷却前評価手法確立への挑戦
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17J02122
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 偉熙 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ガイド波探傷 / 渦電流探傷 / 磁性金属細線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は積層高温超伝導線材接合部における電気抵抗(接合抵抗)の予測技術の開発であり、昨年度は内部に空隙が存在することを確認することができた。本研究の対象である積層高温超伝導線材接合部と似ている構造を持つ複合材料の内部に存在する剥離を検出するのにガイド波探傷技術は有効であり、当研究への適用可能性が見いだされたため、当該技術のノウハウを持つポルトガルのリスボン大学のHelena Ramos教授の元へ留学し検討と実証実験を行なった。その結果、S0モードのガイド波を励起し接合部を通過した信号を分析することで、接合部の長さの変化を検出することができた。これは接語部の端部で剥離が生じた場合に実際に接合している長さを定量的に評価できることを示す。また、接合部からの反射信号を分析することで接合部端部で剥離もしくは内部構成物(インジウム)の欠如が発生した場合の深さを定量的に評価できることがわかった。 一方、接合部での電流分布分析による接合部電気抵抗(接合抵抗)予測において、数値解析上で接合部の周囲に様々な渦電流励起コイルを当てはめて周囲で発生する磁場の変化を評価した。その結果、接合部内部に広範囲の空隙を仮定したにも関わらず、磁場の大きさの差異は検出に有効とされる1%に下回る結果となった。これの原因は、接合部内部に磁束が侵入できず渦電流を励起できなかったので、空隙の存在によって発生する磁場の擾乱を検出することができなかったためであることが判明した。そこで、磁束が接合部内部を通る経路に磁性金属細線の挿入を仮定したモデルで解析した結果、磁場の変化において5%の差異を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は本来の予定にはなかったガイド波探傷技術の本研究への適用を検討したため、本研究の電流分布可視化による検査技術の開発に関しては、数値解析上で接合部内部に存在する空隙を検出できる見通しを立てたものの、実証までは達成することはできず本来の計画より遅れることになった。 一方、ガイド波探傷技術では接合部の端部の剥離を検出することができることがわかったため、本研究の主目的である接合部の検査技術の開発に関して進展を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでガイド波探傷技術はS0モードのLamb波を励起し、これが接合部端部の変化によって生じる差異を分析していた。一方、A0モードのLamb波はS0モードの波よりも伝播速度が遅く、接合部内部に剥離が存在していた場合にこれによって生じる信号の差異が判別できるようになると想定しているが、現状まだこれを励起するのに適切な方法が見つかっていないため、この方法を模索する。また、励起するガイド波は対象物の構造にも依存するため、対象である高温超伝導線材の幅もしくは内部構成物の厚さの変化してもそれに適したガイド波を励起できるような対応方法について研究を進める予定である。 電流分布可視化による検査技術の開発に関しては磁性金属であるニッケルの細線を機械的ラップジョイントの接合部に挿入し、実証実験に取り組む。実証実験の次に実施する予定である実機体型への適用を検討する際、現在取り組んでいる接合部の検査技術を適用した時に接合部の電気抵抗(接合抵抗)の劣化を最低限に抑える必要がある。したがって実証実験は渦電流探傷技術を元とした電流分布可視化の有用性を確かめると同時に、接合部に異物(ニッケル細線)を挿入した時に接合部の電気抵抗(接合抵抗)にもたらす影響も評価する。なお、現状の数値解析モデル上では5%の磁場の変化を確認することができたものの、その磁場の大きさは10の負の13乗のオーダーであるため、これを検出するためにはSQUIDのような感度が非常に高いセンサーが必要となると見込まれる。そこで、磁場の増大方法や磁場検出方法の模索といった課題の解決への取り組みを踏まえて実証実験を行う。
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