2017 Fiscal Year Annual Research Report
流出解析と環境DNA分析を用いた種の生息位置推定モデルの開発
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17J02158
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 典子 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 環境DNA / 水生昆虫 / 定量PCR / メタバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
○流域網羅的な環境DNAの季節変動を解析できるデータセット獲得のため,全14地点において月に1回程度の頻度で,水サンプルの採取,河川環境調査および底生無脊椎動物の定量調査を実施した.また環境DNAサンプルの分析および採集した底生無脊椎動物の目視同定を行い,データセットを構築した. ○水路実験を見据えた事前実験として,流水水槽を用いてヒゲナガカワトビケラ・キンギョの飼育および環境DNAの生産および減衰の様子を測定した.その結果,2生物とも同様の増減を示すこと,また減衰係数に大きな差がないことが分かった. ○無脊椎動物群の環境DNAをメタバーコーディング解析し,データを得た.無脊椎動物のミトコンドリアDNAのCO1領域を対象として,超並列塩基配列解析(Next Generation Sequencer, NGS)を実施した.現在,2016年5月から12月に採取した全75サンプル分の生物相データが得られ,各地点・各季節における多様性解析,水生昆虫の生態史の説明等として,現在解析中である. ○本課題の最終目的で生物生息位置の推定達成のために必要な情報を収集した.2016年~2018年4月現在に発表された論文,および学会発表や研究集会の場で収集し,1)生物種ごとに河川水から取り出せるDNAの状態が異なる,2)DNAの状態により環境中における分解率および維持率が異なる,3)堆積物中においてDNAが保存されやすい,4)死骸・捕食者の糞等に混入したDNAがノイズとなりえる等の知見を得た.これらより,生物生息位置の推定を試みるにあたって対象とする生物種選定の方向性,DNAの状態(e.g.懸濁物質,溶存物質),流下プロセスにおいて影響の大きい現象,ノイズの除去対策方法など,勘案するべき項目を把握することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
○異なる土地利用河川における環境DNA原単位量の推計:水文モデルにおけるDNA量のインプットを表現するため,面的に存在する無脊椎動物から面源的にDNAが供給される面源負荷(ノンポイントソース)の考え方を導入したデータ収集を試みた.2017年3月~5月に調査を実施したが,天候等の条件により実測値にばらつきが生じ,解析が困難となった. ○流下過程における環境DNAの減衰・生産係数の推計:溶存酸素濃度の分解式(Streeter-Phelps式など)に倣い,DNAの生産・分解式のパラメータを推定することを試みた.森林河川および市街地河川を対象とし,100m間隔程度のサンプリング区間を設け,流下距離と各地点の環境DNA濃度,また水温を測定した.しかしその結果,区間によってパラメータのばらつきが大きく,生産・分解式を設定することが困難であった.
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Strategy for Future Research Activity |
○異なる土地利用河川における環境DNA原単位量の推計:調査期間を延長し,先行晴天日数に着目したデータ収集を実施することとする. ○流下過程における環境DNAの減衰・生産係数の推計:環境DNAの生産・分解式の導出が困難と成った原因として,河川区間内に存在する瀬・淵構造が環境DNA濃度に影響を与えている可能性が考えられた.このため,河川の微小形状に留意したサンプリングを行う予定である.また,短期間の調査では水温差が表れにくいことから,他季節における調査を新年度に計画している.
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Research Products
(3 results)