2017 Fiscal Year Annual Research Report
自治領なき領域的自治の機能:ソ連解体期のクリミアと沿ドニエストルの比較研究
Project/Area Number |
17J02213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松嵜 英也 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 領域的自治 / 民族小数派 / 領域制度 / 制度分析 / 分離 / 権力分有 / クリミア / 沿ドニエストル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「非自治地域」における領域的自治の機能を明らかにすることである。具体的には、ソ連解体期において、自治が権力分有の役割を果たしたクリミアと分離の機能を果たした沿ドニエストルの比較分析を通して、自治の機能の相違を生み出した背景を考察する。初年度では、論文執筆と研究報告、在外調査を行った。 まず、本研究と大きく関わる博士論文を提出した。論文では政治制度、地政的、社会的条件が類似するものの、ソ連解体期にウクライナ内の自治共和国になったクリミアとモルドヴァから実質的に分離した沿ドニエストルを比較分析し、民族少数派の領域制度の選択の相違を説明した。その際に、少数派リーダーの権力基盤となる中核的な政治組織 (州委員会と共和国労働集団合同評議会) の振る舞いに着目し、「中核組織の支持調達と国民国家形成の受容、外部関与の受容の程度に応じて、少数派は自治や分離を要求する」という仮説を実証した。とりわけ、戦間期に形成された自治が、ソ連解体期の両地域において、区画の自律性を高めるための支持調達に用いられたことは、本研究にとって重要な知見だったと考えられる。 また旧ソ連の分離問題の研究動向を教科書向けに執筆し、それは『21世紀国際社会を考える―多層的な世界を読み解く38章』に掲載され、クリミア自治共和国の再建をクリミア・タタール人の帰還運動との関係から分析し、British Association for Slavonic and East European Studiesの年次大会で報告し、それを『スラヴ研究』で発表した。第8回東アジア・コンファレンスで、クリミアと沿ドニエストルの比較研究を報告し、ウクライナのキエフ工科大学で、紛争後の国家建設における領域的自治に関する講演を行った。 最後にウクライナ大統領府国家行政アカデミーの客員研究員の資格を得て、在外調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、博士論文を提出し、査読論文1本、共著1本、研究報告3回(英国、韓国、ウクライナ)を行った。それに加えて、ウクライナの在外調査を実施し、本研究に不可欠な文献収集やインタビューなどを行っている。以上から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、引き続きウクライナで在外調査を実施するとともに、クリミアの分離運動やそれを理解するのに不可欠なウクライナの内政分析、沿ドニエストルの国内政治を分析する。あわせて在外調査の成果発表も行う予定である。
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Research Products
(5 results)