2018 Fiscal Year Annual Research Report
架線フリー化に向けた鉄道用超電導ワイヤレス電力伝送への挑戦
Project/Area Number |
17J02242
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 良太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 非接触給電 / 鉄道用非接触給電システム / 高温超電導コイル / HTSコイル / 交流損失 / 電力伝送効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,蓄電池技術の進歩に伴い,架線のフリー化を目指して,鉄道用非接触給電システムの導入が期待されている。その一方,既存のシステムは,数100 kW級の電力を10 kHz程度で伝送するため,1次側および2次側コイルの発熱およびレール等に発生する渦電流損によって伝送効率が低下することが問題となっている。これらを解決する方法としては,動作周波数の低周波化が考えられるが,銅コイルを用いる場合は,低周波化するほど伝送効率の指標であるQ値が低下するため,コイル自身の発熱を抑えて大電力伝送を行うことが難しい。そこで,本年度は,低周波領域(数kHz以下)においてもQ値の低下が少ない高温超電導(HTS)コイルを鉄道用非接触給電システムに適用することを考え,低周波領域における電力伝送特性について検討した。具体的には,鉄道用非接触給電システムにHTSコイルを適用する場合の有効性を評価するため,銅コイルを用いた既存システムの実験結果とHTSコイルを適用する場合の解析結果を比較することにした。1.2 m×0.8 mの空間に約40 kWを給電する場合のHTSコイルの伝送効率は,冷凍機の運転温度に関わらず,90%以上となり,銅コイルの場合よりもコイル自身の発熱を抑制できることがわかった。また,HTSコイルを用いる場合は,動作周波数を既存システムの約10分の1程度に低減できるため,レール等に発生する渦電流損や変換器に発生するスイッチング損失を低減できると考えられる。その一方で,冷凍機の消費電力を含めた効率は,銅コイルを用いる場合の伝送効率よりも低くなることが確認された。このため,HTSコイルに発生する交流損失を低減する必要があることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった,①有限要素法を用いた数値解析により,HTS線材の幅,巻数,巻き方などがHTSコイルの交流損失に与える影響の明確化,②回路シミュレータを用いて鉄道用非接触給電システムを想定した場合におけるHTSコイルの交流損失を抑えられる回路構成の明確化を達成している。また,これらの結果に加えて,HTSコイルを適用した鉄道用非接触給電システムの低周波領域における電力伝送特性を明らかにした。また,国際会議や国内会議に参加し,鉄道用非接触給電システムや高温超電導コイルの交流損失に関する情報収集を行った。なお,本年度の研究成果は,学術論文,国外および国内学会において報告している。以上より,本年度の進展はおおむね順調であったと評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状の超電導線材を用いた場合,冷凍機の消費電力を含めたシステム効率は,銅コイルを用いた場合の伝送効率よりも低くなることが確認された。そのため,今後は,HTSコイルの形状の最適化を行い,低損失化の方針について検討する予定である。
|
Research Products
(5 results)