2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis and Visualization of Behavior Using Trajectories of Walking People
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17J02298
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
宮城 優里 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 可視化 / 軌跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,歩行者がどのような意図や目的を持って行動しているかを分析し,その結果を具体的な歩行軌跡とともに可視化することである.初年度の計画は,主に以下の項目を実施することである. 1.行動の意味や歩行者の状態の定義と,軌跡データへのラベルの付与 2.新たな歩行者の移動軌跡データの作成 3.短期留学先である可視化の研究室での,可視化部分の実装 1に関しては,5月から7月にかけて論文調査や,ラベル付与のためのツールの調査,比較を進めた.特に,提案手法の基礎的な部分である,移動物体にラベルを付与するツールの試用を行なった.実際に採用する手法の検討は現在も継続中であり,引き続き調査する予定である.2については,6月末に開かれた研究室間の交流会でのポスターセッション中に,ポスター説明者および参加者についての移動軌跡を記録し新たなデータを作成した.共同研究者の主導によってカメラ8台で同時に記録した歩行者動線を結合し,今までより広い撮影範囲での行動を表すデータが使用可能となった.今後の研究で,より多彩な行動パターンを検出し,歩行者群をとりまく環境をより広範囲に把握することが期待できる.3については,2017年11月初旬からおよそ2ヶ月間ドイツのシュトゥットガルト大学に留学した.現地の研究者との議論の結果,歩行軌跡の分析手法に関連する研究テーマとして,視線軌跡の可視化に取り組んだ.帰国後にも実装を継続し,3月末に実験結果をフルペーパーにまとめて投稿した.留学中は異なる研究テーマにも取り組むこととなったが,これらはどちらも軌跡データの分析と可視化を主題としている点で大きく類似している.したがって,視線分析のために実装した手法を,今後の歩行者群の行動分析にも応用できるものと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,全般的には歩行者群の行動分析と視線分析の双方の研究で一定の進捗を得たと考えている.年度前半に取り組んだ行動分析の研究では,当初の計画どおりに,複数カメラ(8台)を使用してポスターセッション中の歩行軌跡のデータセットが取得できた.これらのデータは,筆者が以前使用していた軌跡データよりも規模の大きなものであり,イベントの参加者の歩行軌跡という実際の事例に近い形のデータである.このデータは歩行者の精密な行動を把握するための基本的なデータとして大いに有用であると考えられ,進捗の1つであると考えている. 年度後半の短期留学で取り組んだ視線分析の研究では,2ヶ月間の滞在の間に新たな可視化画面を作成でき,実験結果をまとめ国際会議のフルペーパーとして投稿できた.投稿時までに筆者が実装した,記号列化した軌跡のパターン分析手法と,有向グラフによる可視化手法は,今後の行動分析と可視化の研究課題への応用もできることと考えている.したがって,やや方向の異なる視線分析の取り組みではあったが,軌跡分析手法の開発という観点から本年度における進捗の1つとみなせると考えている. 一方で,計画通りに進まなかった点や課題も残された.年度の前半に取り組んだ,歩行軌跡に対して歩行者の状態を表すラベルデータを付与する手法については,どの手法を用いるかの決定には至らず,再度調査を行なって検討を継続する.また,年度の後半に実施した短期留学中はやや異なる研究課題に取り組むこととなったため,本来計画していたほどに歩行者群の行動分析の研究が進められなかった. 以上のように,幾つかの点で予定通りに進まなかった点や進捗が十分でなかった点もみられるが,軌跡の分析と可視化に関する研究に一貫して取り組み,進捗を出せたことから,おおむね順調に進展したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,DC1の研究課題を進めると同時に,関連テーマである徘徊軌跡検出の研究を並行して進める. 行動分析の研究に関しては,2017年に取得したポスターセッション参加者の歩行軌跡を対象として,分析と可視化の実装を進める.まず,昨年度に引き続き,歩行軌跡に歩行者の状態を表すラベルを付与する手法の調査を進める.これまでの調査で,ラベルの付与は筆者らの想定よりも作業量が多いことが判明した.学生アルバイト等に委託することを前提として,手法の検討を進める予定である.ラベルの付与手法を決定し,付与作業を終えたのちは,軌跡の形状と与えられたラベルの種類との関連性を分析する.例えば,軌跡を形状ごとに複数のグループに分類した上で,各グループの軌跡がどのようなラベルを持ちやすい傾向があるかを調べる.本年度後半には,これらの分析の結果の可視化を試みる.軌跡の形状を要約して停止地点などの特徴を強調して表示すると同時に,歩行者の状態を軌跡に付随して表示する.最終的な可視化結果の評価は,ユーザテストにより行ないたい. 上記の行動分析手法の実装と並行し,介護施設等での入居者の徘徊検出の研究を進める.この研究は,与えられた歩行軌跡のうち徘徊行動に該当する軌跡を特定,検出することを目的として,軌跡の形状の分類や特徴抽出を行なうものである.これらの手法は,今後の行動分析の研究を進める上でも有効である.なお,昨年度は一時的に行動分析と視線可視化の2種類の研究を並行させたため,主体である行動分析の研究に少々の遅れが生じた.視線可視化の研究は2017年度の後半に実施した新たな研究テーマである.一方,本年度取り組もうとしている徘徊検出の研究については,一部の機能を筆者が修士課程在籍時にすでに実装済みである.そのため,徘徊検出の研究は行動分析の研究に支障をきたすことなく並行してすすめることが可能であると考えている.
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Research Products
(7 results)