2017 Fiscal Year Annual Research Report
生殖巣の食品学的品質改善 磯焼けのウニを高級食材へ
Project/Area Number |
17J02308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
髙木 聖実 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | キタムラサキウニ / 生殖巣 / 品質 / 味 / 遊離アミノ酸 / マコンブ / ワカメ / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
「磯焼け域に生息するキタムラサキウニの生殖巣は、葉状部が肥厚充実し、窒素やアミノ酸が増加する夏季の養殖マコンブを与えれば高品質化する」という仮説を検証し、生殖巣の高品質化に最適なウニへの給餌時期の解明に取り組んだ。また、マコンブ葉状部は先端から基部にかけて物質が転流するため、異なる葉状部位がウニ生殖巣の品質に及ぼす影響を調べた。ワカメの胞子葉(メカブ)と中肋の影響も併せて検証した。 5-7月にかけてマコンブを与えてウニを海中籠育成を行ったところ、生殖巣の量的発達と色彩が向上した。強い甘味を呈するアラニンが顕著に増加し、漁場となるアラメ群落のウニを上回り、苦味を呈するアルギニンはアラメ群落のウニよりも少なかった。漁業関係者および料理人による官能評価において、育成ウニは総合評価を含むほとんどの項目でアラメ群落のウニよりも高評価を得た。磯焼け域のウニ生殖巣を漁場のウニよりも高品質化した初めての成果を得られ、仮説を立証した。 同育成期間に基部から先端まで5等分したマコンブ葉状部の基部、中央部、先端部を与えたウニ生殖巣の品質を調べた。生殖巣の大きさと硬さでは部位間の差はなかったが、色彩の黄色度は基部に近いほど強かった。うま味を呈するグルタミン酸および甘味を呈するアラニンとプロリンは基部に近いほど増加し、苦味アミノ酸は中央部位を与えると増加した。従って、先端部は味を薄くし、中央部は苦味を強め、基部はうま味と甘味を強くするといえる。同育成期間において、ワカメメカブは中肋よりも生殖巣を量的に発達させ、マコンブ基部を与えた生殖巣よりもうま味を強く、苦味を弱くした。マコンブ基部とメカブを与えたウニは共にミシュランガイド掲載鮨店の職人対象の官能評価において高評価を得た。マコンブもワカメも藻体部位により品質改善効果が異なり、成熟時期に遊走子嚢を形成する部位に高い品質改善効果があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、5月から7月にかけてウニを育成すると、アラメ群落のウニよりも生殖巣を高品質化できることを立証した。先行研究との比較から、上記時期が最も磯焼け域のウニ生殖巣を高品質化できる給餌期間であることを明らかにした。 マコンブ基部とメカブを与えたウニに対して、当初行う予定ではなかった味覚センサを用いた生殖巣の味の評価を行うことで、主観にとらわれない味の評価を行うことができた。また、ミシュランガイド掲載の鮨店における官能評価試験により、最も高値で取引されているウニと育成ウニの品質を比較でき、育成ウニの商品価値を評価することができた。また、マコンブとワカメの遊走子嚢を形成する部位において品質改善効果が高かったという結果から、海藻のフェノロジー(生物季節)に密接に関わる物質配分が摂食したウニ生殖巣の品質改善に大きな影響を与える、当初の仮説を実証することができた。そして、生殖巣の味の改善に大きく関わる物質の特定に向けた実験へと前進することができた。一方で、ウニに与えた海藻の成分分析と、ウニ生殖巣の香気成分分析結果の解析を終了できなかったため、上記のような進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
天然の漁場でウニが主に摂食していると考えられるコンブ目褐藻であるアラメがウニ生殖巣の品質に与える影響をマコンブとメカブと比較して評価する。 5月から7月にかけて、ウニに与えるマコンブとメカブの成分と、ウニ生殖巣の品質との相互の時系列的な変化を調べることで、給餌期間中に最も高品質な味へと変化する時期の特定と、それに関与する海藻の成分組成変化を究明する。そして、マコンブ基部とメカブに多く含まれる味の改善に寄与するアミノ酸を特定するために、各種アミノ酸を添加した人工飼料を用いて飼育実験を行う予定である。
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Research Products
(5 results)