2017 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母の呼吸から発酵への移行期における膜輸送体不活性化の機構とその意義
Project/Area Number |
17J02369
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 翔貴 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 出芽酵母 / グルコース不活性化 / モノカルボン酸輸送体 / 原形質膜輸送体 / ミトコンドリア膜輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母における外界環境中へのグルコースの流入による1) 原形質膜ピルビン酸輸送体(Jen1)と2) ミトコンドリアピルビン酸輸送体(MPC)の分解制御機構(グルコース不活性化)の解明を目指した。 1) Jen1のグルコース不活性化は、ユビキチン化を介したエンドサイトーシス依存的に制御される。このユビキチン化はユビキチンリガーゼRps5とそのアダプタータンパク質Rod1によって制御されており、本申請以前より推進している研究において、Jen1のC末端領域がRod1からの認識に重要であることが示唆されていた。本研究では、このC末端領域に対してアラニンスキャンを実施し、Rod1からの認識に重要な領域の同定を試みた。その結果、認識に必要な3アミノ酸残基を明らかとした。また、その近傍のリジン残基がグルコース依存的にユビキチン化されていることも示唆された。さらに、このリジン残基を含むRod1からの認識に重要な領域を他の原形質膜輸送体(メチオニン輸送体Mup1)へ移植すると、Rod1介したグルコース依存的な分解制御を受けることが明らかとなった。以上の結果より、Jen1C末端領域はRod1-Rsp5複合体を介したグルコース依存的な分解を調節するために十分な領域(Degron)であることを明らかとした。 2) 本研究では、MPCがどこで分解されているのか同定することを試みた。まず、主要なタンパク質の分解を担っている液胞やプロテアソームで分解されているか解析を行った。液胞中の主要な酸性プロテアーゼPep4の破壊株を用いてMPCの分解をWBで経時的に解析したところ、pep4Δでは野生株と同程度の速度で分解されていた。また、プロテアソーム阻害剤で処理した細胞でも、MPCの分解遅延は見られなかった。以上により、MPCは液胞やプロテアソームによって分解されていないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではJen1のグルコース不活性化に必要な領域を明らかにし、さらにその領域の移植が他の膜輸送体(メチオニン輸送体Mup1)のグルコース不活性化を引き起こすに十分であることを示した。この成果をまとめ、学術雑誌Journal of Biological Chemistry誌に投稿し、現在2回目の改訂稿を作成しているところである。改訂稿を準備するために、再実験を求められ、その対応に時間を費やしたため、ミトコンドリアピルビン酸輸送体の実験に十分な時間を充てることが出来なかった。MPCはMpc1とMpc2(低親和性型)またはMpc3(高親和性型)とヘテロダイマーを構成したもので、外界環境に応じてピルビン酸のミトコンドリアへの輸送量を調節している。今年度は、非発酵性炭素源を含む培地(呼吸条件下)で発現するMpc3のタンパク質量がグルコースの添加によって減少することを確認し、その減少にプロテアソームや液胞による分解は関与しないことを明らかにした。従って、Mpc3量の減少にはミトコンドリアのタンパク質分解系が関与していることが示唆された。今後は、この減少に関わる因子を特定すると共に、グルコース添加によって特異的に分解される機構の解析を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きMPCの分解制御機構の解明を目指す。今年度の成果により、MPCは酵母細胞内で多くのタンパク質分解を担う液胞やプロテアソームで分解されないことが示唆された。そのため、上記2つとともにミトコンドリアの品質管理機構を担う代表的な因子であるミトコンドリア内プロテアーゼを中心に、酵母遺伝子破壊株ライブラリーを用いたMPCの分解が遅延する因子のスクリーニングを行う。 また、本研究の目的の1つであるグルコース存在下での非発酵性炭素源の取り込み制限異常株の作製に着手する。すでにグルコース存在下での分解を回避するJen1変異体(安定化Jen1)は取得済みであるため、グルコース存在下での高親和性MPCの安定化を目指す。そのために、エラープローンPCR法を用いたランダム変異の導入を実施し、グルコース刺激に応答した分解を回避するMpc3変異体を取得するとともに、分解に重要なアミノ酸配列の同定を試みる。さらに、安定化Jen1とともに、安定化高親和性MPCが発現する株(ピルビン酸取込み制御異常株)の作製を行う。この株と野生株を乳酸培養後(呼吸条件)、グルコース・ピルビン酸混合培地(発酵条件)へ移行することで、グルコース不活性化を誘導した際の転写レベルでの包括的な制御の違いをマイクロアレイ解析によって比較する。さらに、同様の条件でメタボローム解析を行い、グルコース不活性化機構が異常をきたすことによる代謝への影響を解析する。
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Research Products
(2 results)