2017 Fiscal Year Annual Research Report
Role of small GTPase Ral in the mechanism of colitis-associated cancer
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17J02428
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
飯田 智哉 札幌医科大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Ral / 大腸 / 炎症性発癌 / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / NLRP3 / インフラマソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎 (UC) では,長期に炎症が持続すると炎症性大腸発癌 (CAC) が生じ得る.CACは通常型大腸癌と異なり,発症早期より粘膜下層に浸潤するという特徴を有するが,その機序については未だ明らかとなっていない点が多い.低分子量GTP蛋白Ralの抑制性制御因子であるRalGAPを抑制すると,Ralが活性化した状態となる.近年,このRalの活性化と膀胱癌の深部浸潤との間に密接な関連があることが示された.しかし,RalとCACとの関係についての報告はなく,本研究では,CACの機序におけるRalの役割を解明することを目的とした. (i) AOM/DSS投与後の発生腫瘍を,RalGAPα2 KOマウスおよび野生型マウスの2群間で比較すると,全発生腫瘍におけるSM浸潤癌の割合は,前者で有意に増加していた.(ii) マウス大腸癌細胞株であるColon26を用いてwound healing assayおよびcell invasion assayを行ったところ,RalGAPα2 knockdown細胞では遊走能および浸潤能が亢進していた.(iii) 両群のマウス大腸組織より大腸上皮細胞を単離してmicroarray解析を行ったところ,RalGAPα2 KOマウスの上皮細胞においてMMP-9およびMMP-13が2倍以上発現していた.これらの遺伝子の発現を,RalGAPα2 KOマウス由来の正常上皮 (Ral-N)・癌 (Ral-T),WTマウス由来の正常上皮 (WT-N)・癌 (WT-T) の4群で比較したところ,MMP-9,MMP-13ともにRal-Tにおける発現が亢進していた.(iv) また,Ral-TにおいてはIL-1β,NLRP3,ASC,Caspase-1の発現が亢進していた.以上のことから,Ral-NLRP3 pathwayがCACと密接に関連していることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WT-N,WT-T,Ral-N,Ral-Tの4群におけるサイトカインの発現をRT-PCRで比較すると,Ral-TにおけるIL-1βの発現が著明に亢進していた.このことから,我々はRalの活性化とinflammasomeとの関連を疑った. (i) Western blotではRalGAPα2 knockdown Colon26において,NLRP3,ASC,Caspase-1の発現が亢進しており,これらはLPSの刺激によりその発現が増強された.(ii) マウス組織においては,Ral-TにおいてNLRP3,ASC,Caspase-1の発現が亢進していた.(ii) Cell invasion assayにおいて,control群と比較して,NLRP3阻害薬を加えたRalGAPα2 KD Colon26群では,浸潤細胞数は有意に低下していた.(iv) 内視鏡により腫瘍の発生を確認次第,NLRP3阻害薬を連日投与し,腫瘍数,腫瘍最大径,SM浸潤を有するマウスの割合,全発生腫瘍におけるSM浸潤腫瘍の割合について検討した.その結果,RalGAPα2 KOマウスではWTマウスと比較してSM浸潤を有するマウスの割合,全発生腫瘍におけるSM浸潤腫瘍の割合が有意に低下していた. 以上より,Ral-NLRP3 pathwayが,CACの深部浸潤において重要な役割を担っていることが明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性腸疾患は,UCとクローン病 (Crohn’s disease: CD) からなる原因不明の難治性疾患である.UCは大腸を病変の主座とするが,CDは口腔内から肛門までの全消化管に病変を呈するという特徴を有している.特にCDにおける小腸病変は,高度の炎症から狭窄や瘻孔を形成し,内科的治療に抵抗性となる場合も多い.したがって,CDにおける小腸病変発症の機序解明は極めて重要であるが,その詳細なメカニズムについては未だ明らかとなっていない点が多い. これまでにCDモデルマウスとしては,自然発症型小腸炎を呈するSAMP1/Yitマウスなどが報告されている.また,CDとNLRP3 inflammasomeの関連については近年報告が散見されるが,我々が注目してきたRalが小腸に及ぼす影響について報告されたものはない. これまでの我々の研究結果から,Ralの活性化がNLRP3 inflammasomeを介した大腸炎及び大腸発癌に極めて重要であることが明らかとなった.また,我々が行った予備実験では,大腸のみならず小腸においてもRalGAPα2が強発現しており,申請者らは,Ralが小腸においても重要な役割を担っている可能性が高いと考えた.RalおよびRal-NLRP3 pathwayが小腸に及ぼす影響を,新たに自然免疫の観点から考察することで,難治性疾患であるCDの克服に貢献することを目的とし,今後の研究を推進していく.
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Research Products
(2 results)