2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハイデガーを核とした「中心」とパースペクティヴ性に関する比較哲学及び現象学的研究
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17J02438
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小田切 建太郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ハイデガー / 現象学 / シェリング / 間文化哲学 / 日本哲学 / 九鬼周造 / 存在 / 偶然性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハイデガー哲学(とりわけその後期思想における存在そのもの及びエルアイクニスと人間存在を)核とした、広い意味でのパースペクティヴ、精神史における「中心」概念、それらの媒体性、人間存在の意味の間文化的・現象学的・哲学史及び精神史的研究である。6月に関西ハイデガー研究会で発表を行い、後期ハイデガーの「存在そのもの」ないしエルアイクニスに関する偶然性の視角からの解明を、日本の京都学派の哲学者九鬼周造の『偶然性の問題』を手がかりとして試みた。これにより今後の研究にとっての多くの基本的な課題・問題点を明確化できた。9月に「ハイデガー・フォーラム」で発表を行った。このときの発表原稿をもとにした論文が、同会の学会誌『Heidegger-Forum』に掲載される。この発表・論文では、1920年代後半から1930年代のハイデガーの思索にとって最重要な位置を占めるシェリングの『自由論』とこれに関するハイデガーによる解釈、存在そのもの・思惟以前的存在をめぐる両者の関係をめぐって、スピノザやM.ガブリエルも参照しながら議論を展開した。10月から1月にかけてウィーンで研究滞在を行った。G.シュテンガー教授のゼミナールに参加し、ヨーロッパにおける間文化哲学の動向についての知見を深めることができた。12月にはパリで「The 3rd European Network of Japanese Philosophy Conference」に参加し、発表(”L’etre en tant que contingence : un essai sur l’etre chez Heidegger”)を行った。12月にカレル大学のDiplom-Seminarで発表を行った。12月ウィーン大学の「Werkstatt Phaenomenologie」で発表を行った。以上が、本年度の本研究の実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまでのところおおむね順調に進んでいる。その理由は、2017年度における以下の学会発表・論文公刊などの研究活動によって説明できる。9月に京都大学で開催された「ハイデガー・フォーラム(Heidegger-Forum in Japan)」では、口頭発表(「ハイデガーのシェリング解釈について――根底と実存及び思惟以前的存在との連関における介在的な知――」)を行った。この口頭発表の原稿をもとに、改題及び加筆修正を施した論文が、同会の学会誌(ジャーナル)『Heidegger-Forum』第十二号に掲載予定である。また、2017年10月から2018年1月にかけてウィーンで研究滞在を行った。これにより、現在のヨーロッパにおける現象学研究及び間文化哲学の動向と趨勢についての知見を深めた。滞在中の11月には、パリで開催された国際学会「The 3rd European Network of Japanese Philosophy Conference」(ENOJP)で口頭発表を行った。12月には、チェコ共和国のプラハ・カレル大学で、ハンス・ライナー・ゼップ教授のDiplom-Seminarに参加し、口頭発表(「Herd und Mensch: Zur Bedeutung des Seins beim spaeten Heidegger」)を行った。このゼミナールは、西田幾多郎の後期のテクスト「世界の自己同一と連続」(1935)における否定性の意味をめぐって遂行された。同じく12月にはウィーン大学で開催された「Werkstatt Phaenomenologie」において口頭発表を行った。これらの活動において、本研究の成果を公表するとともに、ハイデガー哲学と日本哲学、ヨーロッパにおける間文化哲学の現状に関する貴重な知見を深めることができた。よって、本研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の研究の推進方策は以下のようなものである。まず、ハイデガーの主著『Sein und Zeit』(1927)の第七節における現象(Phaenomen)とロゴス(Logos)の中動態に関する記述に関するこれまでの私の研究を踏まえて、さらにこれを深化・展開する。これと同時に、これの日本語のさまざまな翻訳に見られる日本語の翻訳表現に注目して、両者の比較対照による考察から、様々な日本語の動詞に関する言語学や(外国人による)日本語学習の研究も観点として参照しつつ、「(私が)見ること」「(物が)見えること」「(物が)見えてくること」といった様々な「視」の姿・次元・動態を多元的視野から現象学的に考察する。この考察によって、「見るもの」・「見られるもの」・「見る/見える」と人間の自己Selbst(ないし場合によって主体Subjekt)の関係に関する本研究にとっての基本的理解を構築する。この関係に関する基本的理解を基礎とするなかで、ハイデガーの思想、そこから見たニーチェや西田幾多郎、あるいはライプニッツなどにおける「意志」「自覚」「表象」の問題に取り組む。これとともに、これらの哲学者の背景にある精神史・哲学史を考慮しながら、本研究の主要な視座である「中心」および「パースペクティヴ」の各哲学者における意味を文献調査によってあきらかにする。こうした作業によって、本研究の取るべき哲学史的・精神史的立場を明らかにするとともに、その立場から見えてくる新たな哲学史の一面を明示する。こうした哲学史的・精神史的事柄を背景としつつ、さらに人間に関わる「視」と「人間的自己(主体)」の隠された意味・次元を現象学的視座から明らかにすることを試みる。以上、本研究の今後の推進方策である。
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Research Products
(7 results)