2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 龍太郎 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 整数論 / 岩澤理論 / Euler系 / Kolyvagin系 / Stark系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,高階のEuler, Kolyvagin, Stark系の一般論について研究した.具体的には以下の2つである. 1:以前の研究によって,単因子論を用いない高階Stark系の定義が得られていた.これを用いることで,完備Gorenstein環上の代数体のGalois表現に対して高階Stark系を定義することができた.また,高階Stark系からある不変量を定義することでSelmer群の高次Fittingイデアル全てを記述することができた.特に,Selmer群の特性イデアルが記述できる事が分かった. 2:佐野昴迪氏とDavid Burns氏と討論を交し,次の2つを証明した.(1):Galois表現の係数が1次元の完備Gorenstein環の場合に,高階Euler系からBurns氏と佐野氏によって定義された高階Kolyvagin系を自然に構成した.また,ある条件のもとでこの写像が全射であることを証明した.(2):高階Stark系の集合から高階Kolyvaginの集合への自然な準同型写像を構成し,適切な階数の場合に同型であることを証明した. 特に,1と2で述べた結果を合わせることで1次元の完備Gorenstein環の場合に高階Euler系を用いてSelmer群の高次Fittingイデアル全てを記述できることが証明できた.また,これらの結果の応用として,同変的な状況で,Leopoldt予想を仮定しないで,Rubin-Stark元を用いてイデアル類群の0次Fittingイデアルを評価する事ができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画にあったStark系の新たな可能性の追求に関しては進展がなかったが,もう一方のStark系の一般論の構成は高次のFittingイデアル全てを記述できたため当初の計画以上に進展している. Stark系の一般論の構成:Mazur氏とRubin氏によって得られていた単項イデアル局所環上の高階Stark系の理論と同様の結果を完備Gorenstein環係数で証明することを目標としていた.まず,`高階Stark系の成す加群は階数1に自由加群である'という性質をSelmer構造がcartesianであるという仮定の下で証明する事ができた.Mazur氏とRubin氏も単項イデアル環の時に同じ条件の下で同じ性質を示している.Mazur氏とRubin氏の証明は単因子論を用いたものであり,完備Gorenstein環係数では同じ証明はできない.従って,この困難を解決できたことは1つの進展であった.また,当初の計画では特性イデアルを記述することを目標としていたが,Stark系から定まる自然な不変量を用いて高次のFittingイデアル全てを記述する事ができた.これは当初の計画の予想を上回る進展であった. また,高階Stark系と高階Kolyvagin系の間の同型写像の存在と高階Eulerから高階Kolyvagin系への自然な準同型写像の存在によって,1次元の完備Gorenstein環係数に対する高階Euler系の理論を構成する事ができた.これは当初の予想を超える大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
Selmer構造がcartesianであるという仮定の下で高階Stark系の成す加群が階数1の自由加群であることを証明できた.しかし,いつSelmer構造がcartesianであるかという問題に対しては満足のいく十分条件が得られなかった.単項イデアル環の場合,Mazur氏とRubin氏は応用上十分なcartesian条件の判定法を得ている.従って,完備Gorenstein環の場合にも,cartesinan条件が満たされるための十分条件を探す.次に,前年度に得られた高階Euler系の理論の岩澤理論への応用を目指す.具体的には,1次元の完備Gorenstein環係数に対する高階Euler系の理論を2次元またはより一般の次元に拡張する.また,研究計画のStark系の新たな可能性の追求にも関係するが,それをもとにMazur-Rubin-Sano予想について考察する.
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