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2018 Fiscal Year Annual Research Report

リベラルな多文化主義の変容と新しい市民権理論―原理論と制度論の複合的考察―

Research Project

Project/Area Number 17J02463
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

河村 真実  神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2017-04-26 – 2020-03-31
Keywords多文化主義 / リベラリズム / パッテン / キムリッカ / カレンス / フィリップス / 国境開放論 / 内部少数派
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、昨年度のリベラルな多文化主義における原理論に関する考察を踏まえて、権利主体となる少数派集団や権利内容など、近年の多文化共生社会における具体的問題を扱うリベラルな制度論について、以下のような考察を行った。
(1)第一に、カレンスらが主張する国境開放論について批判的に検討し、その特色や問題点を考察した。国境開放論における主要な主張は、移動の自由の観点から個人は国籍の有無にかかわらず権利を享受できるというものである。こうした国境開放論に関する考察の結果、①近年、アメリカを中心として展開される国境開放論は、一時労働者、難民、不法滞在者等、従来多文化共生政策の対象外とされてきた集団にまで権利主体の範囲を拡大するという点において、諸論者から注目を集めつつあること、②こうした権利主体の拡大は、社会の関係性に焦点を当てる新たな文化概念を提示することにより権利主体の拡大を試みる、パッテンの原理論と近親性を有していること、等が明らかとなった。
(2)第二に、フィリップスらが主張する内部少数派論について批判的に検討し、その特色や問題点を考察した。内部少数派論者は、集団を単位とする文化的権利が、少数派集団内部の女性や子ども等、内部少数派と呼ばれる人々への不当な抑圧を生じさせることを指摘する。こうした内部少数派論に関する考察の結果、①イギリスを中心として展開されてきた内部少数派論は、文化保護の文脈において女性や子どもなどの内部少数派を保護する必要性を強調するという点において、諸論者からの関心が高まりつつあること、②しかしながらパッテンら最新の原理論者は、こうした内部少数派論者の批判に対する明確な応答を行っていないため、今後は原理論の内部少数派問題に対する応答可能性を検討していく作業が不可欠であること、等の重要な知見が得られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

具体的には、以下の点から研究が順調に進展しているといえる。第一に、キムリッカらの通説としての制度論と、カレンスらにより展開される最新の制度論の考察という作業に関しては、主要論者の主要なテキストの大半を分析し終わり、リベラルな制度論について一定の考察の見通しをつけることができた。こうしてカレンスらの国境開放論やフィリップスらの内部少数派論を中心とした制度論に関して得られた知見については、学会等で報告を行った。これによりリベラルな制度論の全体像を把握することができたことは、今後の研究遂行を円滑にすると考えられる。
第二に、リベラルな制度論に関する詳細な考察により、多文化共生社会における具体的問題を議論する制度論と、多文化共生社会政策の理論的基礎となる原理論の交錯に関する手がかりを得ることができた。特に、新しい文化概念による権利主体拡大という原理論的側面と、国境開放論による権利主体拡大という制度論的側面との関係性を示唆するなど、原理論と制度論の交錯について一定程度明らかにすることができたことは、本研究の目的である原理論と制度論の複合的考察への布石となると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

ここまでの研究では、リベラリズム内部における制度論の全体像を把握することができ、リベラルな原理論と制度論の交錯についても、部分的に明らかにすることができた。そのため、今後の研究推進方策としては、パッテンらにより展開される原理論とカレンスらにより展開される近年の新しい制度論との間で生じている相互の言及関係を分析し、近年のリベラルな原理論と制度論の複雑な交錯関係に関する総合的考察を深める。具体的には、原理論と制度論の比較を通し、社会の関係性に着目する新しい文化概念と国境開放による権利主体拡大の関係性について更に考察を深め、内部少数派論者の主張と原理論の交錯についても検討する。さらにリベラルな多文化主義理論とコミュニタリアニズムやナショナリズム等の多文化主義理論との間で想定される応酬を考察し、多文化主義における原理論と制度論の複合的考察を完成させる。

  • Research Products

    (3 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] リベラルな多文化主義における新しい文化概念 : アラン・パッテンを手がかりに2019

    • Author(s)
      河村真実
    • Journal Title

      六甲台論集法学政治学篇

      Volume: 65(2) Pages: 1-20

    • DOI

      10.24546/81011187

    • Open Access
  • [Presentation] リベラルな多文化主義における権利論の再構成―アラン・パッテンを手がかりに2018

    • Author(s)
      河村真実
    • Organizer
      新学術領域研究「グローバル関係学」第2回若手研究者報告会
  • [Book] 新たなマイノリティの誕生:声を奪われた白人労働者たち2019

    • Author(s)
      ジャスティン・ゲスト 著 吉田徹、西山隆行、石神圭子、河村真実 訳
    • Total Pages
      416
    • Publisher
      弘文堂
    • ISBN
      978-4-335-46038-8

URL: 

Published: 2019-12-27  

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