2017 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄の初期県政(1879-1883)に関する政治史的研究
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17J02525
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
前田 勇樹 琉球大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 沖縄初期県政 / 華族県令 / 明治期新聞 / 琉球処分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、沖縄における初期県政(1879-1883年)の政治構造を分析し、近世期の琉球 王府から近代沖縄県への政治主体の転換過程を実証的に明らかにすることを目的としてい る。本研究の特色は従来の研究で看過されていた①日本の新聞資料、②琉球国王家資料群の「尚家文書」、③琉球士族層の系図家譜に含まれる近代記事、④華族県令関連資料を用いて、沖縄の「初期県政」の実相や政治構造についての分析を試みるところにある。 初年度は7月と2018年3月に国立国会図書館にて新聞資料調査を実施した。7月の調査では『東京曙新聞』、3月の調査では地方紙(主に『大坂新報』)を中心に収集を行った。この成果は博士論文所収の「(沖縄)初期県政関連新聞記事目録」に反映されている。 学会報告については、沖縄文化協会東京大会(9月30日)において「いわゆる琉球処分過程における「官公調査」と内政改革案について」と題する報告を行った。この成果は「一八七〇年代前半の琉球(藩)における官公調査―鹿児島県管轄期と外務省管轄期を中心に」と題する論文として『沖縄文化研究』45号(2018年3月)に掲載されている。また、今年度はこの他に「沖縄の初期県政における華族県令―ヤマト・メディアの沖縄報道を中心に」(『日本歴史』833、2017年10月)と「『読売新聞』の琉球・沖縄関連記事について―明治前半期(1874~1893年)を中心に」(『琉球アジア社会文化研究』20、2017年11月)の2論文が研究誌に掲載された。また、これらの研究成果を集成した博士論文「沖縄初期県政に関する政治社会史的研究―華族県令と「旧慣」政策を中心に―」を2017年12月に琉球大学へ提出した(2018年3月に博士の学位を授与)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新聞・雑誌などのメディア資料の収集は概ね完了し、次年度に予定していた「琉球処分」をめぐる歴史認識の問題も博士論文の内容に組み込むことができた。新聞については予定していた大手新聞だけでなく、「大坂新報」などの地方紙や『読売新聞』の網羅的な収集など対象時期の範囲や場所を広げた形での作業ができており、今後は琉球藩期(1872~1879年)まで対象時期を延ばして収集作業を行う予定である。一方、家譜をはじめとする旧士族層の近代史料については、市町村市史の所蔵する明治期の「辞令書」の収集を行っているが、家譜資料の収集については次年度の課題となっている。 学会報告や論文投稿もほとんど予定していた通りに進み、最終的には博士論文の提出に至っており、おおむね順調に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、メディア資料の追加調査とそれに伴う資料整理および目録の作成、家譜資料の収集、明治初期を中心とした「尚家文書」の継続的な調査・収集と翻刻を行う。メディア資料については、対象時期を琉球藩期まで広げつつ、海外新聞や風刺雑誌など対象も広げて収集作業を行う。また、家譜資料に関してはプライバシーの問題を考慮しつつ、現在確認することができる明治期の記述を含んだ家譜資料の総件数と一覧(所蔵先を含む)をまとめる。
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