2017 Fiscal Year Annual Research Report
マーニーリウス『アストロノミカ』における詩的伝統の研究
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17J02533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹下 哲文 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン文学 / マニリウス / ウェルギリウス / ルクレティウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマーニーリウスとウェルギリウスとの間に共通する自然と人間との緊張関係に着目し,先行研究の批判的検討を行った.理性という共通項を介しての神と人のつながりを強調する『アストロノミカ』は,人間の知的能力を高く評価し,文明についても非常に進歩的な歴史観を示している.そしてそこには先行詩人であるルクレーティウス『事物の本性について』やウェルギリウス『農耕詩』における人間や歴史の捉え方を踏まえたうえでの独自の展開が認められることを明らかにした.この研究成果は『神話学研究』誌に発表された. また,研究課題となるマーニーリウスに関し,特に帝政初期という政治的・社会的背景を念頭に置きながら当時の著作家たちと占星術の関係に焦点を当てて分析した最新の研究(Steven J. Green, Disclosure and Discretion in Roman Astrology : Manilius and his Augustan Contemporaries)を読み,その書評を『西洋古典学研究』誌に発表した.Greenの著作では,ウィトルーウィウス,ホラーティウス,オウィディウス,プロペルティウス,ゲルマーニクスなど様々な作家が各々独自の立場から占星術・天文学にアプローチしている(あるいは逆に距離をとっている)ことが論じられており,こうした他のジャンルの作家をも念頭に置きながら研究を行うべきであるという認識を得ることができた. 上記に加え,文献学の歴史に関して特に20世紀前半のイタリアでの動向に関する調査を行い,今日的な古典文献学の成立に関する知見を深めその成果を論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マーニーリウスと先行詩人との関係について,「文明観」という点から行った分析を論文にまとめることができた. 書評執筆を通して最新の研究動向と問題意識に詳しく触れることができ,今後の研究方針の手がかりを得るができた.
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Strategy for Future Research Activity |
前年までは主としてマーニーリウスの先行詩人との関係に着目して研究を行ってきた.今後はマーニーリウスの同時代にあたる詩人・著作家たちとの関連にも焦点を当て検討していく.
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Research Products
(3 results)