2017 Fiscal Year Annual Research Report
新生児脳神経障害における臍帯由来間葉系細胞の機能解析と新規治療への応用
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17J02535
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
向井 丈雄 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2) (60871324)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 再生医療 / 脳性麻痺 / 新生児脳障害 / 間葉系細胞 / 臍帯 / 神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児脳神経障害における臍帯由来間葉系細胞の機能解析と新規治療への応用を検討するため、採用第1年度は、臍帯由来間葉系細胞(臍帯由来MSC)の神経保護効果を証明するための実験を行った。 In vivoの脳性麻痺マウスモデルとして、新生仔脳出血モデルを作成し、手術2日後に臍帯由来MSCを静脈内投与し、その後の行動機能と病理学的評価を行った。また血清・髄液・脳組織での神経栄養因子の解析と、投与後臍帯由来MSCのtrackingとしてIn vivo imagingのIVISと、脳組織のAlu-PCRと免疫染色を行った。 頭部MRIでは臍帯由来MSCとコントロール群で大きな変化は見られなかったものの、神経機能(行動距離、rearing回数等)の改善を認めた。また、脳の組織学的評価では臍帯由来MSC投与群で、Vehicle群に比してGFAP陽性の反応性グリオーシスの減少、MBP陽性細胞の増加(Hypomyelinationの改善)、アポトーシス細胞の減少が認められた。また臍帯由来MSC投与群では、血清・脳組織・脳脊髄液中のヒト神経栄養因子であるhuman- Brain derived neurotrophic factor (BDNF)とhuman- Hepatocyte growth factor (HGF)の上昇がみられた。その一方で、投与した臍帯由来MSCは、IVISとAlu-PCRでは脳へのMigrationはみられたが投与3週間後には消失していた。 これらの結果より、臍帯由来MSC投与による行動機能の改善の機序としては、投与後臍帯由来MSCの神経分化・生着ではなく、臍帯由来MSCからのBDNFやHGFといった神経栄養因子の分泌によるものが考えられた。これらの結果について論文に受理された(Neuroscience. 2017 May 11;355:175-187)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である、臍帯由来MSCが神経障害に対して保護効果をもたらすかどうかの検討を行い、in vivoの脳障害モデルにおいて神経保護効果をもたらすことを示した。 また、その機序の解明として、臍帯由来MSCが、神経栄養因子であるhuman- Brain derived neurotrophic factor (BDNF)とhuman- Hepatocyte growth factor (HGF)をマウスの体内で分泌しており、且つ障害された脳へ遊走していることが示された。一方で遊走した臍帯由来MSCは投与3週間後には消失することが示され、これらの結果より、臍帯由来MSC投与による行動機能の改善の機序としては、投与後臍帯由来MSCの神経分化・生着ではなく、臍帯由来MSCからのBDNFやHGFといった神経栄養因子の分泌によるものが考えられた。 これらの成果は臍帯由来MSCを神経障害に対する治療薬として用いる可能性を考慮する上で非常に重要であり、本研究課題の遂行に関しては概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はin vitroにおいて神経障害モデルを作成し、そこに臍帯由来MSCを共培養することで 臍帯由来MSCから分泌される神経栄養因子の影響を検討し、shRNAや中和抗体を用いて阻止することにおいて検討を重ねる。 更に新生児脳障害の中の低酸素性虚血性脳症モデルを用いて臍帯由来間葉系細胞を用いて治療効果、メカニズムを検討する必要がある。スウェーデンのカロリンスカ研究所は低酸素性虚血性脳症モデルであるRice-Vannucci modelを世界トップレベルで作成している施設であり、そのRice-Vannucci model作成技術を獲得し、臍帯由来間葉系細胞を用いて治療効果・メカニズムを検討することで、更に新生児脳障害に対する細胞治療としての可能性が広がるため、カロリンスカ研究所へ海外渡航してその実験を発展させる。
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