2017 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡凝縮に遭遇する超臨界流体を支配するマルチフィジックス熱流動の解明
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17J02560
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮澤 弘法 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 超臨界流体 / 非平衡凝縮 / CFD / 超臨界二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
超臨界状態の流体は発電や化学工学など様々な分野での利用が期待されるが、その条件下では局所的な温度・圧力の低下により凝縮が発生する場合がある。凝縮の過程で生じる潜熱の放出や、液滴の挙動が流れ場や流体機械の性能に影響を及ぼす可能性があるが、その実態は未だに解明されていない。本研究の目的は理想気体の仮定を逸脱した超臨界条件下の熱流動においても、非平衡凝縮現象を計算可能なマルチフィジックスCFDを開発し、その流動現象を解明することである。本年度は凝縮モデルの再構築、非平衡凝縮を伴う超臨界流体の数値解法の開発、ならびにそれらを用いたノズル内流れの二次元流動解析を実施した。 1. 2016年にInternational Wet Steam Modeling Project (IWSMP)により湿り蒸気モデルについて議論がなされ、本年度はそれに基づいてこれまで用いてきた凝縮モデルの再構築を行った。再構築した凝縮モデルを用いて多段静動翼列を対象とした数値解析を行い、凝縮が動翼へ作用する力へ及ぼす影響について明らかにした。 2. 1の研究と並行して、非平衡凝縮を伴う超臨界流体の数値解法の開発を行った。当初の予定では、この数値解法の検証のために高圧条件下の蒸気のノズル流れとの比較を実施する予定であったが、期間中に凝縮を伴う超臨界二酸化炭素のノズル内流れに関する実験についての報告を発見した。後者の実験が本テーマにより即していると判断し、解析対象を変更した。シミュレーションは二次元で行い、軸対称を仮定して流路の半分の領域を計算した。計算結果は実験で測定された壁面圧力とよく一致しており、その妥当性が示された。次に、同じ境界条件で“凝縮が生じない”と仮定したケースと比較し、凝縮に伴う潜熱の放出が流れ場へ大きく影響することを明らかにした。また、ノズル入口の温度条件を変化させると凝縮の初生位置および湿り度が変化し、ノズル内の圧力分布が大きく変化することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は予定通りに非平衡凝縮モデルの再構築と非平衡凝縮を伴う超臨界流体の数値解法の構築が完了した。これを用いて非平衡凝縮を伴う超臨界二酸化炭素のノズル内流れの二次元シミュレーションを実施し、数値解法の妥当性を示した。また、非平衡凝縮による流れ場への影響、および温度条件と凝縮の関係について明らかにした。今までにない非平衡凝縮を伴う超臨界二酸化炭素流動の数値解法を二次元解析において確立したことで、本年度の目標の大部分を達成できたと考えている。 当初はノズル内流れの二次元解析の次に圧縮機翼列を対象とした二次元流動解析を実施する予定であったが、これを非平衡凝縮を伴う超臨界二酸化炭素ノズル内流れの三次元流動解析へと変更した。その理由は、ノズル内を通過する超臨界二酸化炭素流動解析を通じて新たな課題が見つかり、三次元解析によるいくつかの検証が必要となったためである。本年度はその解析プログラムの作成を行った。この解析結果は最終的な目的である実機の圧縮機を想定した三次元流動解析の妥当性検証としても利用できるため、現段階では予定の変更による進捗状況への影響はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は引き続き非平衡凝縮を伴う超臨界二酸化炭素のラバールノズル内流れの三次元流動解析を行い、凝縮の三次元的な影響について調査する。次に、圧縮機翼列を通過する超臨界二酸化炭素の三次元非定常流動解析を実施する。翼列では、ノズル流れでは見られない後流や流路渦などの非定常な流動現象が生じる。翼列流路内で発生する凝縮がこのような後流や渦と干渉することによって生じる現象や、それらが圧縮機の性能へと与える影響について評価する。本研究の成果は、超臨界二酸化炭素発電の効率向上だけでなく、様々な超臨界流体の非平衡凝縮問題への応用が期待できる。
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Research Products
(2 results)