2018 Fiscal Year Annual Research Report
メディアがもたらした近代教育―新史料「御用書林 村上勘兵衛家文書」に基づいて―
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17J02573
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
樋口 摩彌 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 京都 / 近代 / 新聞 / メディア / 村上勘兵衛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新史料村上勘兵衛家文書(以後、「村上文書」と略称)を用いて御用書林村上勘兵衛の情報発信の実態と教育事業の関連を解明するものである。 2017年度は、村上文書の近世後期から近代までの未整理が多く残る文書を選別し、新聞、通信、勧業、教育などの項目に分類した。その成果を土台に、重要度が高い史料から解読および分析を進め、2018年7月にメディア史研究会にて「明治初年の京都の新聞発行―村上勘兵衛の動向に注目して」の報告を行った。 また村上勘兵衛は明治初年に複数の新聞紙を発行しているが、同志社大学にはその新聞紙を含む未整理の貴重な新聞紙が数多く所蔵している。2017年度は新聞紙の整理を行った。その成果に基づき、2018年度は日本マス・コミュニケーション学会にて、「明治・大正期の新聞紙の整理保存およびデジタルアーカイブの検討ー立命館大学アート・リサーチセンターの事例を参考にー」をテーマにワークショップを行い、最新の技術の発達をふまえて、史料に関する保存やデジタル化について検討した。 また当研究を進めるにあたり、新聞紙は研究史料として非常に重要である。しかし検索の可否、史料の散逸、個人宅での保管の実態など、問題点は多く残る。よって2018年9月メディア史研究会にて「地方の新聞史料 : 個人コレクションの可能性に注目して」として貴重な新聞史料の現状や研究における新聞史料の適正な利用方法を報告し、拙著「地方の新聞史料―個人コレクションの可能性に注目して」『メディア史研究会』45号2018年、を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度前半は、7月のメディア史研究会の報告「明治初年の京都の新聞発行―村上勘兵衛の動向に注目して」に向け、村上文書の新聞発行や通信事業に関するものの翻刻および分析を進めた。報告では、新史料である村上文書を発掘したこと、それを利用した研究を進めつつあることが評価され、村上文書の重要性が研究会にて」共有された。一方で村上文書という新史料を用いる際、文書群の全容を明示する必要があることを指摘された。これについては、2017年度より村上文書を扱った研究を進める中で、筆者自身も必要性を認識していた事項であった。とりわけ教育に関する古文書は様々な簿冊や綴りに分散して所収され、見落としなく研究を進めるには、悉皆的な調査が必要であった。 それをふまえ、2018年度後半は、2019年度に村上文書を用いた論文を投稿することを前提に、村上文書の全容を把握する調査に比重をおいた。調査は近現代の史料整理の経験がある、大阪市立大学大学院文学研究科都市文化研究センター研究員、中嶋晋平氏と2人体制で行った。 村上文書には43年前に作成された仮目録がある。しかしこの目録の作成方針として近代史料は重要視されておらず、未整理のものが散見された。また数百点もの行政文書が「一括」とまとめられており、正確ではなかった。 本調査では、第一段階として、近現代の史料の未整理のものを全てを調査し、史料の取りこぼしがないようにつとめた。第二段階として「一括」としてまとめられていたものを1点1点調査した。2018年度は合計383点の史料の目録をとった。この結果、村上文書の全体像の把握が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は1,村上文書の近代文書の目録作成を継続2.村上勘兵衛の教育とメディアに関する事業の論文執筆を行う。 1.は明治初年の行政文書の写し数百点が「簿冊1冊」として所蔵されていた。この時期の行政文書は、国立公文書館や歴彩館にも所蔵が少なく、貴重な史料である。村上文書にある近代史料は膨大で、全ての史料の目録を数年で作成するのは困難である。しかし今後、村上文書を研究の典拠として用いるにあたり、可能な限り詳細な目録を作成することを目標とする。よって2019年度も、2018年度の調査を継続して進める。 2.は日本マス・コミュニケーション学会に、明治初年の新聞発行を支えた村上勘兵衛が、教育、勧業などざまざまな事業を同時進行で展開してきた実態に関する論文を投稿する。近代日本において、マスメディアと教育が並立して発展したきたことは、すでに指摘されている。しかし明治初年といういずれもの黎明期において、一人の人物が同時期に事業を展開してきたことは指摘されていない。本研究は、一次史料である村上文書を用いて、マスメディアと教育の連関を解明することを試みる。
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Research Products
(2 results)