2017 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンリモデリングによる幹細胞老化と癌の制御機構の解明
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17J02669
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
仁田 暁大 九州大学, 大学院医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 老化 / 造血幹細胞 / CHD8 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はクロマチンリモデリング因子CHD8による幹細胞老化制御機構の解明である。組織幹細胞の老化は種々の疾患やがんなどの加齢関連疾患の発症に深く関与している。近年、CHD8の機能の消失が自閉症発症を引き起こすことが多数報告されており、自閉症の責任候補遺伝子として注目される中、CHD8ヘテロノックアウトマウスは自閉症様の表現型を示すことを当研究室が報告している。また以前より、CHD8はリンカーヒストンであるヒストンH1を呼び込むことで、がん抑制遺伝子p53活性を抑えることが当研究室により明らかとなっている。このように注目度が非常に高い遺伝子が幹細胞老化に関わる可能性が高いことが考えられ、その機能を詳細に解析することが急務であると考えられる。 予備的な研究から、CHD8は造血幹細胞において高発現していること、血液細胞特異的CHD8ノックアウトマウスの造血幹細胞は、造血幹細胞分画の増加、一部の老化関連遺伝子の発現上昇、幹細胞性の減弱という老齢のヒトでもマウスでも認められる表現型と合致する結果が得られている。 そこで、当該年度ではこれらの表現型がどういった分子メカニズムでおこるかを解明するためのマウスを用いた解析を行った。血液細胞特異的CHD8/p53ダブルノックアウトマウスを作製し、造血幹細胞の幹細胞性の評価および、連続移植実験を行った。その結果、血液細胞特異的CHD8ノックアウトマウスの造血幹細胞で認められた老化様の表現型が部分的に回復することが明らかとなった。さらに、血液細胞特異的CHD8/p53ダブルノックアウトマウスの骨髄細胞を移植すると、血液細胞特異的CHD8ノックアウトの骨髄細胞の移植で認められた血液細胞再構築能が回復することなど、CHD8/p53ダブルノックアウトマウスの造血幹細胞はこれら老化様の表現型の多くを回復するであろうことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、自閉症を発症する責任遺伝子として世界中で最も注目を集めている、クロマチンリモデリング因子CHD8が老化とがんに関わっている可能性を研究している。マウスを用いた老化やがんの研究は時間を要する実験が多いが、当初の予定と大きなずれなく進行していると考えている。一方で、メカニズムの解明のための大規模解析を計画していたが、同時に行っていたp53/CHD8ダブルノックアウトマウスの表現型がCHD8ノックアウトマウスの表現型をほぼ回復したため、この必要性が薄れ、大規模解析の優先順位を下げ、p53/CHD8ダブルノックアウトマウスの解析に主眼を置いている。 現時点では最低限の肝となるデータは得られているが、マウスを用いた老化研究に加えてp53ノックアウトマウスを解析していることから、マウスの遺伝的な死亡が原因となり予定通りに研究を進めるのは困難な場合もあるため、今後の実験の進捗に左右する可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはじめに、血液細胞特異的p53/CHD8ダブルノックアウトマウスの造血幹細胞が血液細胞特異的CHD8ノックアウトマウスの造血幹細胞と比較して、どれほどの表現型の回復が認められるかを評価する必要がある。一方で、先行研究の若齢マウスと老齢マウスの造血幹細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した大規模解析から、CHD8は若齢マウスの造血幹細胞と比較して老齢マウスの造血幹細胞で発現量が低下していることが明らかとなっている。そこで次に、現在作製が完了しているCHD8トランスジェニックマウスの解析を進める。これは老化してもCHD8が発現が低下しないマウスであるため、このCHD8トランスジェニックマウスの造血幹細胞が如何なる表現型を示すかを評価することが可能である。これにより、先行研究における老齢マウスの造血幹細胞の老化の原因がCHD8の発現低下が原因かを評価する。予想通り老化の原因と判断できるデータを取得した場合、このCHD8トランスジェニックマウスを用いて造血幹細胞が老化しないCHD8の発現量を探索し、老化に伴うCHD8の発現量低下が造血幹細胞に与える影響を評価する。
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Research Products
(1 results)