2017 Fiscal Year Annual Research Report
角川映画をめぐるメディア実践の社会学的研究――記憶メディアの産業化に着目して
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17J02733
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 和都 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | メディアミックス / メディアマテリアリズム / メディア史 / 文化研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用初年度にあたる本年度は、研究プロジェクトを遂行するに当たって必要になる理論的な検討および、本プロジェクトが対象とする1980年代多メディア環境の先行形態である戦前期日本における映画環境の調査・考察を中心に行った。 理論的な検討においては、近年の英米圏のメディア研究における「ハードウェア・スタディーズ」や「ソフトウェア・スタディーズ」、「メディア考古学」、「メディア・インフラストラクチャー研究」といった、メディア・コンテンツの「解釈」に焦点を当てるのではなく、そういった「意味」の次元を様々な技術的条件を介して構造化するメディアの物質性に着目する動向を参照した。それらの諸研究は、先行研究においていわゆる「メディア」として名指されてきた対象を、様々な技術や技法、仕組みといった要素群へと発見法的に分節し、その上でそれぞれの要素が連関しながら作動する具体的な場を記述し、そうすることで、「メディアはメッセージである」というメディア研究の命題を従来とは異なる仕方で展開していくものだったといえよう。すなわち、いわゆる「メディア」の効果・作用を従来とは異なる仕方で「実証」的に記述することを企図しているものである。 以上のメディア研究における議論の展開を踏まえ、戦前期の映画館のメディア実践を具体的な対象として、一次的なメディアとしての映画に付随する様々な二次的なメディアを対象とした歴史的研究を行った。様々なハードウェアやインフラストラクチャーが複合することで上映可能になる映画の特性が映画館という上映環境を条件付ける点に着目しつつ、従来の歴史記述からは排除されてきた二次的なメディアとしてのプログラムを対象として「発見」し、新たな映像文化史の歴史叙述の可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年間のプロジェクトの基礎となる理論的な検討が十分に行われたため。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、1960-70年代における映像産業のあり方に焦点を合わせた考察を行う。テレビ産業と映画産業のあいだの相互作用関係に着目し、同時期にいかにして一方の産業が他方の産業を利益の最大化のために活用したのかを分析する。その際、作品や人物イメージをめぐる権利関係に注目し、いかにして資本の再生産のために肖像権等が利用されていったのかを考察する。そうすることで、メディアミックスの現代的あり方の系譜を明らかにする。 同時に、1970-80年代における「ニューメディア」をめぐる言説状況を調査する。LDやVHSといった「ニューメディア」は映像環境を劇的に変容させることになったが、当時の文脈においてそれらの技術がどのように想像され、使用されていたのか、またそれらの技術が導入されることで、「映像」概念がどのように再定義されたのかを考察する。そうすることで、「同一のコンテンツ」という発想が技術性の水準ではいかに曖昧なものであるのかを明確にし、メディアミックス環境下のオーディエンスや経験のあり方を理解するための道筋の一つをつける。
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