2017 Fiscal Year Annual Research Report
擬代数多様体と軌道体における定スカラー曲率ケーラー計量と代数的安定性の研究
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17J02783
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 聡 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 一般化されたケーラーアインシュタイン計量 / ファノ多様体 / トーリック多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
標準計量の存在と一意性は複素多様体論における基本問題の一つである. 2010年代に Chen-Donaldson-Sun, Tian がケーラーアインシュタイン計量の存在と代数幾何学的な安定性が同値で有ることを示して標準計量の存在問題を解決したが,二木不変量が消えない場合は依然として問題は解かれていない. 2017年に Yao が満渕の一般化されたケーラーアインシュタイン計量が幾何学的安定性と関係する事を見出し,トーリックファノ多様体の場合は,その存在が完全にトーリック幾何学的に判定出来る事を示した.Yao の結果はトーリック幾何学に基づいており,そのままでは,一般のファノ多様体に拡張する事は難しい. 今年度は,Yaoの結果を,Modified Ding汎関数の固有性として捉える解析的安定性および,相対Ding-Futaki不変量の正値性として捉える代数的安定性と同値である事を示した.これは,一般化されたケーラーアインシュタイン計量の存在問題の解決への意義深い示唆となった. また,安定性を弱めた形での同値性も示した. さらに,Ricci Calabi汎関数の停留点での様子を調べた.Ricci Calabi汎関数はファノ多様体固有のエネルギー汎関数であり,その停留点は一般化されたケーラーアインシュタイン計量である.Ricci Calabi汎関数の停留点でのヘッシアンが非負であることが分かった.応用として,満渕により得られていた,一般化されたケーラーアインシュタイン計量を許容するファノ多様体の正則ベクトル場のリー環に関する松島型の構造定理の別証明を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軌道体や擬代数多様体の標準的ケーラー計量に関しては研究結果を得ることができなかったが,滑らかなファノ多様体に関する標準的ケーラー計量の存在問題に対して新たな研究の方向性を見いだすことができた.一般化されたケーラーアインシュタイン計量の存在問題は軌道体や擬代数多様体にも拡張されるべき自然な問題である.これらの空間に対する標準的ケーラー計量の存在問題の理解が深まることが期待できるという点で,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,一般化されたケーラーアインシュタイン計量に関する研究を進めていく予定である.具体的には,トーリックファノ多様体で確立した解析的安定性や代数的安定性による特徴付けを,一般のファノ多様体に対して拡張する試みを行なっていきたい.
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Research Products
(11 results)