2017 Fiscal Year Annual Research Report
選択肢集合の部分集合における個人の順序付けルールに関する理論研究
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17J02784
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
栗原 崇 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 選好理論 / 冪集合 / レキシマックス / レキシミン / レキシメディアン / null alternatives |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、選択肢集合の部分集合を順序付けるための辞書式ルールを定義し、それを理論的に特徴づけることである。現在は論文を査読付き雑誌に投稿しており、6月に3つの国際学会で発表予定である。
また昨年の12月から、雑誌への投稿を通して設定の大幅な変更を行ったことにより、公理化の方針も大きく変更する必要があった。主な変更点は、以下の通りである。まず、すべての部分集合を辞書式に順序付ける際、要素数が揃っていることが望ましい。そのため、当初は各選択肢を「選ばない」という選択肢を可視化する際、空集合を用いていた。ところが、この場合は多重集合(同じ要素がいくつも含まれていてよい集合)で記述する必要がある。さらに、マッチング理論で用いられるempty slotsという空集合とほぼ等しい要素を用いた方法と類似しており、貢献がempty slotsを含めて辞書式に比べるという点に限られてしまう。そこで、「選ばない」という選択肢を、null alternativeと名付け、それらが無差別でないことを許容する枠組へ拡張した。たとえば、選択肢aが非常に好ましく、選択肢bが非常に好ましくない場合、それぞれを「選ばない」ことが無差別であると考えない人も多いはずである。この点を考慮することで、望ましいもの順に比べるleximaxというルールに、望ましくないもの順に比べるleximinという概念を組み込むことに成功した。これは、基数性を持つ効用という概念に、序数的なまま一歩近づくことが可能となり、辞書式ルールの欠点を改善し得る枠組となった。
計画書で言及したスコアリングルール及び選択肢の相性の良さに関する研究は継続中である。ただし、ERC協力事業の件もあり、派遣先の研究内容に沿う形で投票理論の研究を行い、査読付き雑誌への掲載が決定した。今後も、本研究と結びつける形で、投票理論を扱う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、計画通り研究を進めている。ただし、スコアリングルールおよび「選択肢の相性の良さ」に関する研究は、概要で述べた変更に伴う修正作業の影響を受けている。
一方で、オックスフォード大学計算機科学科のElkind教授のもと、投票理論に関する論文を4本執筆しており、そのうちの1本をEconomics Lettersに掲載することが確定した。また、異なる研究グループの研究者と、部分集合の辞書式順序付けルールの応用として、情報ネットワークに関する共同研究を開始した。
これらの研究を通して、計画書で述べた「選択肢の相性の良さ」と並行して社会的選択理論やネットワークへの応用可能性を見出すことができ、今後の研究の更なる発展につながった。以上を踏まえ、全体としておおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の目標を達成するべく、研究を進める予定である。
①部分集合の辞書式順序付けルールに関する論文を海外の学術雑誌へ掲載する。今後は、離散数学や組み合わせ論などの分野で、社会科学への応用研究を対象とする雑誌に掲載することを目指す。 ②選択肢の相性の良さに関する定義づけを行い、それを考慮した辞書式ルールの定義づけを行う。 ③投票ルール(best-worstルール)の新たな公理化を行う。主に、既存研究における公理化で用いられた必要十分条件の一部を弱めることを目的とする。 ④aよりもbのほうが望ましいといった相対的な選好関係に加え、絶対的な「好き嫌い」という尺度を導入することでボルダルールの改良を行う。これは、上の概要で先述したempty slotsに似た、outside optionというものを用いる。outside optionは空集合と同義であり、何も選んで異なことを表し、これよりも望ましいか否かで、好き嫌いを表現する。このような意味で、null alternativesとも関連する概念である。 ⑤情報ネットワークについての研究を進める際に①の研究を応用する方法を模索する。
上記に加えて、部分集合のスコアリング順序づけルールに関する研究も進める予定だが、①における大幅な変更を経て、「序数的な順序付けルールを用いて、どこまで基数的効用が存在する世界へ近づけるのか」というテーマの重要性を知ったため、①~⑤の研究よりも優先度を下げる予定である。
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Research Products
(8 results)