2017 Fiscal Year Annual Research Report
軟弱狭隘空間で超安定走破性を実現する全方向面状クローラ機構の研究
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17J02818
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
髙根 英里 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 機構設計 / 全方向 / 移動機構 / 災害対応ロボット / クローラ機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,小径履帯を複数配置した面状全方向クローラ移動体の設計・試作,実機実験を行い,考案した駆動方式の原理の有効性を示した.2つのモータを内蔵した面状全方向クローラ試作機を用いて,平地で任意方向に自走可能であることを確認した.さらに,段差上での動作実験を行った結果,前方向のみでなく,測方向,斜め走行も可能であることを実機実験より示した.また,直径約5mmの砂利上や,軟弱地を模したスポンジ上での任意方向への走行が可能である事も実験的に示した.さらには,面接地による走行面への荷重分散が期待通り行われていることを床反力を計測し示した. 以上の内容を,国際学術誌であるRA-Letterに,国際会議IROS2017での発表付で採択されており,学会現地での発表に合わせて,活発に海外の研究者とも研究議論を行った. 次に,実環境での使用を考慮し,側方向踏破性向上のための履帯脱離低減機構・テーパ状履帯構造の設計・具現化を行った.この構造を実装した面上全方向クローラ機構を設計・試作し,実機試験を行い,段差踏破の実機実験を通して,実際に側方向の踏破性向上を確認した.さらに実環境として,雪上での任意方向走行試験を行った. 以上の内容を国内会議SI2017で発表し,また国内会議robomech2018で発表予定である. 以上のように,これまで困難であった不整地上での全方向移動が,今年度の一大径履帯を用いた実機実験により,実際に可能であることを示した.砂利,段差,雪上での任意方向への走行を可能としたことは今後の災害対応ロボットの発展において,非常に重要で意義のあることである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,ラックチェーン機構を用いた2つのアクチュエータのみの駆動方式の考案を行い,原理確認を小径履帯1つでの実機設計を通して行った. 本年度では,小径履帯を複数配置した面状全方向クローラ移動体の設計・試作,実機実験を行い,考案した駆動方式の原理の有効性を示した.2つのモータを内蔵した面状全方向クローラ試作機を用いて,平地で任意方向に自走可能であることを確認した.さらに,段差上での動作実験を行った結果,前方向のみでなく,測方向,斜め走行も可能であることを実機実験より示した.ただし段差は30mm,大径履帯直径の約10%,小径履帯直径の約100%である.また,直径約5mmの砂利上や,軟弱地を模したスポンジ上での任意方向への走行が可能である事も実験的に示した.さらには,面接地による走行面への荷重分散が期待通り行われていることを床反力を計測し示した. 次に,実環境での使用を考慮し,側方向踏破性向上のための履帯脱離低減機構・テーパ状履帯構造の設計・具現化を行った.この構造を実装した面上全方向クローラ機構を設計・試作し,実機試験を行った.段差踏破の実機実験を通して,実際に側方向の踏破性向上を確認した.さらに実環境として,雪上での走行試験を行った.走行後の轍の深さを計測すると,約50mm(テーパ高さの約50%)であり,この実験からも測方向踏破性が向上したことが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
「面状全方向クローラ機構」の試験機による模擬環境への導入を行う.具体的には,軟弱性以外の凹凸地形を模擬している試験環境での走行試験をする.そのために,段差乗り越えのため端部を屈曲させた小径履帯の設計,ベルトのグローサの最適形状設計を行う.自立化させた状態で,模擬環境での動作実験を行い,得られた知見をフィードバックするサイクルを繰り返し行う.さらに凹凸地形になじむための,スペンションと伸縮を許容するチェーンの検討・設計,実機への搭載を行い,を組み込んだ,設計パラメータの再構築を行う. 模擬環境は屋内を想定したもので,階段や瓦礫,エレベータや改札などを通過可能な形態まで機体の実装レベルを向上させる.また,走破性向上のために,全方向面状クローラ機構に付加するフリッパアームなどの機能を検討し,全体構想の案をまとめる. また,面状全方向クローラ機構の大径履帯を左右に2つ配置する「左右2ユニット履帯構成」での実機実験や,旋回動作を考慮した設計の向上を行う予定である.ここでは,大径履帯の配置を並列配置とすると,長手方向に前後 2 ユニット並べた直列配置など,他の配置方法も可能であることも示し,構成方法の幅を広げる. さらに,ラックチェーン機構の特性として,伝達効率の異方性を評価し,ラックチェーン機構を平歯車以外の機械要素を使用して構成する方式を吟味するなど,伝達機構としてさらに拡張・発展させていく予定である.また,「面状全方向クローラ機構」は走行面などの接触対象物に対して,1点で任意方向に駆動力を伝達可能な「2軸交差駆動機構」である.他の「2軸交差駆動機構」からの観点からも同様に,伝達機構としてさらに拡張・発展させていく予定である.
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Research Products
(5 results)