2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02841
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東野 将伸 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 日本近世 / 金融 / 資金循環 / 地方都市 / 豪農 / 大坂商人 / 中間支配機構 / 領主財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①地方都市商人の金融機能と在方・大都市との関係、②地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性の2点の分析をふまえて、近世―近代移行期の日本における資金循環構造の変容過程を明らかにすることを目的としている。 本研究の1年目の課題は、(1)地方都市商人の文書の収集と基礎データの整理・分析・学会報告、(2)地方都市商人と都市・地域との金融関係についての分析の2点であった。(1)については、岡山県立記録資料館、岡山商科大学附属図書館(以上、岡山県岡山市北区)、井原市文化財センター(岡山県井原市)、笠岡市役所生涯学習課(岡山県笠岡市)、たつの市立龍野歴史文化資料館(兵庫県たつの市)などで史料調査を行い、地方都市商人家の経営帳簿や地域経済にかかわる文書類を収集した。これらの史料をもとに、備中国・播磨国の地方都市商人や有力者の経営分析を行い、近世後期における経営動向や地域において果たした金融機能の一端を明らかにした。この分析成果の一部を大阪歴史学会近世史部会・日本史研究会近世史部会合同報告会で報告した。 (2)については、大阪大学大学院経済学研究科経済史・経営史資料室、大阪大学大学院文学研究科日本史研究室(以上、大阪府豊中市)、国立国会図書館(東京都千代田区)などで史料調査を行い、大坂両替商と大坂近郊の有力農民家の経営関係史料、江戸幕府の経済政策関係の史料などを収集し、(1)での分析ともあわせて、都市と地域との経済・金融関係や幕府貸付政策と地域との関係について、一定程度分析を進めた。 なお、畿内地域の経済的特質や周辺地域との労働力をめぐる関係、備中国の有力農民家の経営動向・金融機能および領主・大坂蔵元との関係については、『日本歴史』831号、『歴史学研究』966号、共著である『開く日本・閉じる日本―「人間移動学」事始め』の執筆論文において研究成果の一部を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目の課題のうち、(1)地方都市商人の文書の収集と基礎データの整理・分析・学会報告、(2)地方都市商人と都市・地域との金融関係についての分析の2点については、いずれも計画通り作業を進めることができており、研究成果の一部の公表も行っている。今年度は特に(1)に重点を置き、地方都市商人の経営や地域における機能についての分析を進めることができたため、次年度以降はこの成果をふまえたうえで、(2)についての分析のさらなる深化や(1)、(2)についての論文執筆、地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性についての分析を進める予定である。 また、岡山藩領や旗本領の有力者家の文書の残存状況の把握や一部の収集も進めることができており、次年度の研究の準備も一定程度行うことができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究内容から引き続き、地方都市商人の経営帳簿や地方都市商人と都市・地域との金融関係を示す帳簿類、訴訟関係史料類などについての分析を進め、学術論文というかたちでの成果の公表を目指す。 さらに、次年度は①旗本領の掛屋文書の収集・分析、②岡山藩領の庄屋文書の収集・分析、③畿内・近国の幕領における豪農・村と領主との金融関係に関する史料収集・分析も課題としている。本年度に把握した史料の所在状況や収集した一部の史料の内容もふまえつつ、岡山県立記録資料館、大阪大学文学部日本史研究室、茨木市立文化財資料館などの史料所在施設において、それぞれの所領における役職就任者・有力者家の経営文書や領主財政との関係を示す帳簿類や書状類などを収集する。 それらの史料の分析をもとに、地域の有力者と領主財政との関係、有力者家の近世後期~幕末維新期の金融活動や明治期の藩債処分への対応などを明らかにしていく。その際、本年度に収集・分析した史料や分析結果についても参照し、領主―領民関係や都市―地域間関係といった広い視野からも各所領における事例の位置づけを試みていく。
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Research Products
(4 results)