2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02864
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
三輪 眞嗣 京都府立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 中世寺院 / 組織 / 学侶 / 教学 / 惣寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中世東大寺の寺院社会において中心的な位置にあった惣寺の内部構造とその形成過程を解明することに注力した。 東大寺図書館や東京大学史料編纂所、金沢文庫での史料調査を実施し、古文書・古記録のほか、東大寺学侶に関する聖教史料を収集することができた。 上記の史料収集と分析を重ねるなかで、惣寺を構成した学侶僧のなかでいくつかの階層が見られること、その上層学侶は聖教の書写・伝領などを通じての教学上のつながりを有していたこと、鎌倉中期における東大寺別当の教学振興を実質的に支えた存在であったことなど、先行研究では明らかにされてこなかった、教学面から見た学侶集団の構造を示すことができた。学侶は修学の経済的基盤として供料を受給していたが、鎌倉中期からそれが滞りがちになり、これに対応するために惣寺として結集していくことを明らかにした。以上の成果は「鎌倉中期東大寺の学侶集団と「惣寺」―別当定親・定済期を中心に―」として『年報中世史研究』43号に公表した。 次に惣寺の確立期とされる鎌倉後期、永仁年間の惣寺と当時の別当頼助との関係を検討した。頼助期の寺家経営は、寺務代定春を中心とする惣寺の自律性が高く、頼助は寺家経営に積極的ではなかったが、鎌倉幕府とのパイプを持つ頼助が別当となったことで、弘安徳政の社会的情勢もあり、東大寺側の所領復興を求める動きが加速し、神輿入洛を伴う永仁の強訴に至った。結果、いくつかの所領復興が達成されるが、この強訴には東南院主聖忠の思惑が絡まっていた可能性を指摘した。寺僧の自律性や一体性として評価される惣寺の運動のなかに、時として惣寺と対立していた院主レベルの貴種僧の意向が伏在していたことは、東大寺惣寺論のみならず、寺院大衆のあり方を考える上で重要な点となる。
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Research Progress Status |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Research Products
(3 results)