2017 Fiscal Year Annual Research Report
神経発生過程におけるHes1遺伝子の発現振動の意義の解明
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17J02922
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
越智 翔平 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Hes1 / 発現振動 / ネガティブフィードバック / 数理モデル / 転写・スプライシング / 神経分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経発生過程において、Hes1遺伝子は神経幹細胞の維持に重要な役割を担う。加えて、その発現は2-3時間の一定の周期で振動する。Hes1遺伝子の発現振動はHes1タンパク質が自身の転写を抑制するネガティブフィードバックにより調節される。また、Hes1の発現振動は微分方程式を用いた数理モデルで表され、この数理モデルから、転写・スプライシングに要する時間が安定した発現振動を維持する上で重要であると予測された。 しかし、Hes1遺伝子の短周期的な発現振動が神経分化にどのような影響を与えるかは未解である。この問題を解決する手法として、Hes1遺伝子のイントロン配列を除去し、転写・スプライシングに要する時間を短縮することで、発現動態を改変を試みた。 Hes1遺伝子のイントロン配列を除去したマウス(Hes1イントロン欠損型マウス)とHes1転写活性レポーターマウスを掛け合わせ、得られた胎児由来の神経前駆細胞を分散培養し、Hes1の発現動態を解析した。結果として、Hes1イントロン欠損型マウスでは野生型より短周期で振動が維持された。 また、Hes1イントロン欠損型マウスは体の大きさが小さくなることが認められた。Hes1イントロン欠損型マウスの胎児脳において、Hes5の発現が上昇していた。神経発生過程において、Hes5はHes1と協調(補償)的に機能することが知られている。そこで、今後Hes1遺伝子のイントロン配列およびHes5遺伝子を同時に欠損したマウスを作出し、神経分化に与えている影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、Hes1遺伝子のイントロン配列を全て除去したノックインマウス(Hes1イントロン欠損型)の作製ならびに変異マウスにおけるHes1遺伝子の発現振動を解析することを目標とした。 ノックインマウスの作製は完遂し、変異マウスにおいてHes1遺伝子の発現振動の短周期化を認めた。加えて、神経発生過程におけるHes1イントロン欠損型マウス脳の解析も進めており、おおむね順調に研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Hes1遺伝子のイントロン配列を削除することで、野生型に比べ転写・スプライシングに要する時間がどの程度早くなったのかを解析し、数理モデルと比較し議論する。 Hes1遺伝子のイントロン配列およびHes5遺伝子を同時に欠損した二重変異マウスの脳を用い、神経分化・細胞増殖に着目した解析を進める。
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