2017 Fiscal Year Annual Research Report
足場なき人間形成論の解明―エーリッヒ・フロムの思想の現代的意義をめぐる学際研究
Project/Area Number |
17J02945
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森田 一尚 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | エーリッヒ・フロム / 亡命知識人 / ジョン・デューイ / 周縁性 / 教育思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学問領域と国境を越える亡命者であったエーリッヒ・フロムの「周縁的」で学際的な学問的立場、ならびに、そこから生み出された足場なき人間形成論を主題とし、彼が影響を受けた思想・哲学、時代状況、さらに彼への批判的言説との思想的対話を行うことで、フロム思想を教育思想として再評価することである。 具体的に研究を遂行するために、申請者は、フロムの思想とデューイの思想の関わりを問う研究を行った。2017年10月14、15日に大阪大学で開催された教育哲学会において「「周縁的」亡命知識人E. フロムの人間形成論--J. デューイの思想との関わりに注目して--」と題する口頭発表を行った。フロムの教育思想は、彼の学問的、宗教的遍歴をたどり、それらの視点から解明されるだけでなく、フロムが著作を発表した当時の時代状況をも考慮に入れることでより豊かに再解釈される。上述の口頭発表では、フロムにとっての「アメリカ」経験がもつ教育哲学・思想的意義を明らかにするために、フロムが批判的に受容していたデューイの思想・哲学を手がかりにしてフロムの思想を読みといた。 また、2017年12月10-16日にかけて京都大学大学院教育学研究科で開講されたUCL教育研究所(ロンドン)との合同授業に参加し、同授業で得た知見をふまえ、報告書に掲載される英語論文を執筆した。さらに研究計画に基づいて、2018年3月15日からドイツ・テュービンゲンにあるエーリッヒ・フロム研究所にて資料収集を行い、フロムのアシスタントであったライナー・フンク氏と交流する機会をえた。また、2018年3月23-25日にはイギリス・オックスフォードで開催された「英国教育哲学会」に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、研究実施計画に基づき、おおむね順調に進展している。本研究の成果は、2017年10月14ー15日に大阪大学で開催された教育哲学会において「「周縁的」亡命知識人E. フロムの人間形成論--J. デューイの思想との関わりに注目して--」と題する口頭発表や、“Tracing the Fate of Voice in Gaslight”と題する、英文報告集論文として公表されている。また、積極的に海外での資料収集、および学会への参加を行った。しかしこれらの研究活動の成果を学会誌に投稿するに至っていない。その理由としては、当初予期していた以上に未見資料が存在しており、文献の収集に時間がかかったことがあげられる。本研究を国際的な領域で拡げていく余地は残されており、また、海外での文献調査の成果をより積極的に論文としてまとめ、発表する必要がある。したがって本研究課題の進捗状況を、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題を推進するために、今後はより積極的に成果を公表する必要がある。具体的には、昨年度の口頭発表「「周縁的」亡命知識人E. フロムの人間形成論--J. デューイの思想との関わりに注目して--」の原稿を発展させ、論文として学会誌に投稿することを目指す。また、修士論文で扱ったフロムとアドルノの関係について研究した論文を『京都大学大学院教育学研究科紀要』に投稿することを目指す。さらに、本研究は引き続き海外での文献調査、資料収集が必要となるため、積極的に海外の研究所を訪れ、フロム研究の国際的なネットワークを拡げていく予定である。また、フロムに関する研究に基づいて、本研究の教育学研究における意義を明確にするために、積極的に国内外の教育学関連の学会、集会等に出席し、先端の知見を取り入れながら研究を推進していく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Tracing the Fate of Voice in Gaslight2018
Author(s)
Kazunao Morita
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Journal Title
Thinking about Education through Film: Proceedings of the 11th International Exchange between the Graduate School of Education, Kyoto University (Japan), and the UCL Institute of Education (UK)
Volume: 1
Pages: 120-124
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