2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J03043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石原 卓弥 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 計量経済学 / ノンパラメトリックモデル / 部分識別 / 操作変数法 / パネルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、非分離的なモデルについて研究し、①``Partial Identification of Nonseparable Models using Binary Instruments”と ②``Identification and Estimation of Nonseparable Panel Data Models”という論文を執筆した。 ①の研究については、2つの国際学会で口頭発表を行った。この研究では、これまであまり研究されていなかった連続な値を取る内生変数と2値の値を取る操作変数が存在するときの非分離的なノンパラメトリックモデルについて研究した。既存の研究では操作変数が内生変数に与える影響が単調でないときにモデルが識別できることを示されていたが、この研究はたとえ操作変数が内生変数に与える影響が単調でも、モデルの構造に経済学の理論から導かれる制約を課すことでモデルが部分識別できることを示した。この論文は現在国際学術誌に投稿中である。 ②の研究については、3つの学会で口頭発表を行った。この研究では、パネルデータを用いた非分離的モデルの識別とそのモデルの推定方法について研究した。パネルデータを用いた既存の非分離的モデルの研究では、(1)時間を通してモデルが変化しない、(2)時間を通して説明変数を変えない個人が存在する、という2つの仮定を必要としている。しかし、そのような仮定が成り立たない応用も多く存在する。そのため、この研究ではこれら2つの仮定を用いない非分離的モデルの新しい識別方法を提案し、その識別方法に基づく推定方法も開発した。この論文は現在国際学術誌に投稿中である。 また、これら2つの論文に加え``Panel Data Quantile Regression for Treatment Effect Models”という論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、内生性のある非分離的なパネルデータモデルを開発し、その理論的な側面を研究した。具体的には、内生性のある非分離的なパネルデータモデルが識別可能になるための十分条件を考え、この識別方法に基づいた推定方法を開発した。 当初の予定通り、この推定量の有限標本での性質を調べるために数値実験を行い、提案する推定量が良い性質を持つことを明らかにした。また、計量経済学または統計学の学会にも積極的に参加し口頭発表を行った。具体的には、「Hakodate conference in econometrics 2017」、「Summer Workshop on Economic Theory 2017」、「2017年度統計学関連学会連合大会」という3つの学会で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き理論研究を続けるとともに、提案した推定手法を用いて実データの解析を行う。実データを解析するにあたって、実証研究をしている研究者と議論して提案手法を適用できるデータを見つける。また、初年度と同様に、国内および国外の学会にも積極的に参加し、国内や国外の研究者と意見交換を行う。具体的には、「Summer Workshop on Economic Theory 2018」、「関西計量経済学研究会」、「Annals of Computational and Financial Econometrics」で口頭発表をする予定である。これらの発表で研究した研究成果をまとめて、国際学術誌に投稿する。
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