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2017 Fiscal Year Annual Research Report

寛容概念史におけるヴォルテールの再定位:懐疑主義・宗教・学問

Research Project

Project/Area Number 17J03172
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

越智 秀明  東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2017-04-26 – 2020-03-31
Keywords寛容論 / ヴォルテール / ピュロン主義 / 懐疑と権威
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、大きく分けて三つの方向で研究を進めた。第一は、これまでの研究につき、発表する場を確保して再検討を行った。とりわけ研究課題に直接つながるものである修士論文の再検討を行い、それを10月に東京大学政治理論研究会において報告した。それによりヴォルテールの理想とした政治体制が如何なるものであったか再考を迫られたが、この問いに十全に応えるためには、ヴォルテールにとり寛容概念が如何なるものであるか、また懐疑という所作についてヨリ根本的な理解が不可欠であると再認識した。
第二に、上記検討に端を発し、「懐疑と権威」というヨリ大きく理論的な考察を行った。即ち、時間的な世界における政治にとって、決定・決断を行うことは極めて重要である。しかし懐疑という所作は――熟議民主主義に対する典型的な批判でもあるが――決定を必ず遅らせる。限られた時間の中で決定を下すには、何か信頼を寄せることができる権威が求められるであろう。如何なる権威に対し如何なる仕方で信頼を寄せることが正当化されうるのか。このことこそ、懐疑主義者が現実社会と積極的な結びつきを有するならば、問われねばならない。そして寛容が懐疑主義の現実の相の一つであるとすれば、如何なる権威を容認できるのか。この大問題を一つの軸に据えて検討した。
第三に、18世紀フランスにおける懐疑主義の位置づけを検討した。当時懐疑主義の代名詞となったピュロン主義が現状追認の傾向を有することはつとに指摘されてきた通り、18世紀フランス啓蒙思想家にとりピュロン主義は寧ろ政治体制変革への歯止めとして機能するものでもあり得た。さらに16世紀第四四半期にセクストゥス・エンペイリコスのピュロン主義に関する著作がラテン語訳され、モンテーニュらがそれを受容したときと比較すれば、宗教的権威の持つ意義も全く異なっている。そこで、フランスにおける懐疑主義の受容のあり方を検討してきた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

申請時には、本年度に懐疑主義研究を進め、次年度に宗教研究へ移行する予定であった。しかし上記研究概要で示した通り現在も懐疑主義研究の道半ばにあるだけでなく、懐疑主義の検討を行うにつれ、哲学的議論としての懐疑主義が如何に宗教思想や現実世界に適用されたかという問題にこそ重要性があるという認識に至った。従って懐疑主義研究を離れることはできず、その意味では予定通り進んではいない。
しかし、懐疑主義と宗教思想との密接な結びつきを意識する必要性の認識に基づいてこれから宗教研究へと軸足を移すことは可能であり、実際その予定である。その点では予定通り、あるいは当初よりも深い認識で研究を進めることができるという点では計画以上に進展しているとも言える。とりわけ権威についての考察を含みうることは、研究全体の大きな指針になる重要な進捗として自己評価している。

Strategy for Future Research Activity

本年度の懐疑主義に関する研究に区切りがつけたのち、上記の通り、宗教研究も行っていく。まずヨーロッパ(ないしアジア)に当時存在している(又はかつて存在した)、とりわけヴォルテールが言及している諸々の宗派について、その典型的議論を懐疑と信頼(権威)という視角で整理することから始める。それによって、ヴォルテールが各宗派を肯定的ないし否定的に評価する際に如何なる点を重要視しているかが明らかになることが期待される。同時に、各宗派が懐疑主義の再来以降に如何なる対抗関係を問題としていたのかを理解するよう努める。この宗派研究を行う際、各宗派の地理的な分布と各地域における政治状況の把握が重要となるため、同時並行的に当時の政治状況にヨリ正確な把握に努める。

  • Research Products

    (1 results)

All 2017

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] ヴォルテールにおける寛容と共和国の理想2017

    • Author(s)
      越智秀明
    • Organizer
      東京大学政治理論研究会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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